「すごい菖蒲ちゃん!全部九割以上じゃん!」
「さっすが高梨ちゃん!平均点上げやがってー!コノヤローッ」
「・・・・あはは」

中学校生活はこれで二度目だからねと言う言葉は、飲み込んだ。

「あーっ来週は成績表かあー私数学下がってるよ絶対。」
「でも中間頑張ってたじゃん?大丈夫だよ」
「余裕ですなー高梨ちゃん」
「そんなことないよ。私、音楽のテスト良くなかったし。今回一段階下がるかも」

何故、自分は生前から死ぬ時までの記憶を、新たに生まれ変わっても忘れずにいるのだろうと生まれた時から思っていた。
確かに要らない記憶なんかじゃない。苦労したこともそれなりにはあったけど、辛い記憶だけではないのだ。家族だっていたし、友達だってそれなりにいた。・・・彼氏はいなかったけれども。高三で推薦もようやく決まったと思ったのに、まさか車で撥ねられるなんて思ってもみなかった。だがしかし、私以外にそのような死に方をした方は少なくはないだろう。なら、何故私は覚えている?事故に遭った記憶なんか、ぶっちゃけいらない。まぁ都合の良い話だが、友達の事、面白かった出来事は忘れたくはないけれども。

「手伝おうか?ノート提出」
「いや、大丈夫大丈夫。二人共部活の集まりあるでしょ?たしか、卒業アルバムの写真とか撮るんじゃなかった?」
「でも・・・」
「遅れたら大変だし。提出期限前に提出した人の方が多いからノート少ないし。大丈夫だから気にしないで。」
「そう?それじゃあ、じゃあね菖蒲ちゃん」
「バイバイ」

二人を見送って、私は職員室へと向かった。ノート提出、今回は皆してるよなぁ・・・もう受験だもんね・・・・・一人を、除いて。


「失礼します。田中先生はいますか?」
「おぉ、こっちこっち。ありがとな、委員長。」
「いえ」

別に好きで委員長(パシリ)になった訳じゃなかった。成績の為でもない。ただ、この担任が成績が良いという理由だけで推薦してきたのだ。まぁ、そのおかげで成績はプラスされたし許す

「あー・・・まーた奥村兄は提出してないかあ・・・最後ぐらいは提出しろっつったのに」
「でも、奥村くん、たしか進学しないんですよね?だったら別にいいんじゃないですか」
「教師としては一回ぐらい出してほしいんだよなー・・・お前、奥村に会ったら卒業式出ろよって言っといてくれ」
「りょーかいしましたー」

じゃ、失礼しまーすと言って私は足早に自分のスクバがある教室へと向かっていった。


*********

「おっくむらくーん」
「・・・・んあ?」
「やっ、ほ!っと、」

神社の石垣の階段を三段程よいしょと登って奥村くんが寝ている場所へと私は移動すれば、彼は起き上がって私を見た。

「ごめん、寝てた?」
「いんや、起きてた」

奥村くんが起き上がった為、私との距離がさっきより開いたので、それ見て私は透かさず少しだけ距離を詰めた。最初の時、奥村くんはこの行動をしたら、どもりながら何だよとびっくりしていたが何度か会ってから慣れてくれた。だって別に奥村くん噂より全然怖くないし料理美味いし乙男じゃんとその時返したら変な反応をされた。別に嫌ではなさそうだったからよかったとは、思う。
それに、そんなに距離空けて話すなんて、逆にどっかのまだ思春期の甘酸っぱい男女そのものじゃないか。いや、一応まぁ年齢的に言ったら思春期なんだろうけど。

「そっか・・・・・ちょっと、また傷増やしてるじゃん。また弟に心配かけちゃうよ」
「うっせ」

まず、出会いが出会いだった。噂は兼ね兼ね名前は知っていたものの、どんな人なのかは知らなくて、中三で初めて同じクラスになり、ある日不良ぶってる奴らに絡まれた時に、私を助けてくれたのだ。すごく、良い人だと感動してたらお礼を言うのを忘れてしまった。
中々同じクラスなのに奥村くんが来ないから謝れなくて。だけど帰り道、道草をしていたら、奥村くんがたまたまいたから、声を掛けようとした。そしたらお腹がぐーと鳴って恥ずかしくてうおおおとしゃがみそうになりながらも素直にすみませんと謝ったらサンドウィッチをくれた。すごく美味しくてしかもそれを作ったのは奥村くん本人ということが判明。もうそんな人に怖いだなんて思うもんか。思わないに決まってる。というか、やっぱりむしろ優しい人だった。そして、その時点である可能性が出てきた。

「ていや!」
「っだ!?」

おでこの小さなかすり傷にでこぴんを食らわしてやったらこれまた良い反応が返ってきた

「あっはは痛そー」
「何すんだっ」
「かすり傷でよかったね。頭の血ってなかなか止まらないから」
「・・・・おう」

奥村 燐。双子。家は修道院。不良に見えるけど実は優しい。
この人物を、死ぬ前に私はアニメで見たことがあるかもしれない。そんなに見なかったからうろ覚えだけど。

もし、・・・縁起でもないが、近々彼が義理のお父さんを亡くしたのなら、それは、

「奥村くん、田中先生が卒業式は出ろよって。」
「ん。わかってるっつっといてくれ。頼む」
「りょーかいした」


私は、二次元に転生したということになる。
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