何故自分はこの世界に生まれたのだろうと思って生きてきた。何故、テレビや携帯、PCなどの電化製品がないこんな格差社会に生まれてきたのだろう、と。

「どこ行った!探せ!!あれはリェロノリア民族の生き残りだぞ!!」

自分の村に兵が責めてきて家族を失った二週間前、常々思っていた思いは膨らみ、この際死んでしまおうかとも思ったが、何の為にお腹を痛め、私を育ててくれたこの世界の母は身を挺して私を守ったのかと考えると、どうしても死ぬ訳にはいかなかった。
そして二日前、奴隷狩りに捕まった時は、不思議と私はこの後どうなるのだろうという思いは一切なかったが、ただ、隙を見て逃げなければという思いが一心にして私を突き動かしていた。

生きなければならないのだ。私は一人で、この世界を。
アイツらが戻ってくる前にここから早く逃げなければ。私の村はもう違う国の物になっているだろうから戻れない。もう、あそこには当分戻ることはない。

「・・・・・・、・・・・っ」

いけない、まだ慣れてないみたいだ。目頭が熱くなってきた。
ぐいっと目元を擦って私はそっと辺りを見回して茂みから出た。
さぁ、ここから近い村はどこだろう?確か昨日食糧を調達していたあの村はそこそこに治安は良かった気がするしそこに行ってみようか。

「すみません、そこのお嬢さん」
「、!」
「チーシャンに行くにはどちらの道に行けばよいのでしょうか?」
「・・・・、・・・・私も、そこへ今行く所です。このまま真っ直ぐ行けば着きます。」

人柄の良さそうなお兄さんはどうやら考古学者で久しぶりに自分の故郷に帰ろうと思ったら道がわからなくなってしまったらしい。

「私はアルギア。アルギア・ビェノサ。お嬢さんのお名前は?」
「ナマエ、です。・・・・チーシャンは、いい所ですか?」
「んー・・・どうだろう・・・?職を探せばとりあえずはいいかな・・・」

職・・・そうだ。職をまず探さなければ。自分は手先は器用な方だから、それを売りにしてまず着いたら何処か雇ってくれる所を探そう。

「・・・・・ナマエさん、ちょっと脚を貸してください」
「、!・・・っへ、」


───パキン、


「・・・・、!?・・・・あ、なたは」
「すみません、勝手に。でももう貴方は逃げてきたのだから違いますよね?」
「・・・・、な、んで知って、」
「先程、その業者の方が騒いでいたのを見たので。さ、これで歩きやすくなりましたよね?行きましょう?」

長いスカートに、ネックレスと腕輪で足についた鎖は隠したつもりだったのだが、どうやらお兄さんはわかっていたみたいだ。
何やらよくわからない魔術で鎖を外してしまった。誰も見ていないからといって・・・こんな・・・

「あ、このことは内密に。ね?」
「・・・・・・は、い」

第一印象は、何だか雰囲気というか、纏う空気が不思議な、浮き世離れした人だと思った。


(それが思い違いではなかったと気付くのはもう少し後の事。)
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