幼い頃から、

いや、物心ついた時からそうだった。


「かえしてよ!」
「いたいっ!!ハ、ハリーがぼくのとったぁ!たたいたぁ!!!」
「ちがう!ダドリーが!」
「まぁ!なんでそんな事するの!ダッちゃんに謝りなさい!」

いつも私達は、彼よりも何倍も優先されてきた。歳を重ねるごとにそれは酷くなっていって、さすがに私もこれは相当おかしいのだと思った。

「・・・・・・・・ママ」
「あら、なぁに?ナマエちゃん」

私は、昔から同学年の子達よりもませた子供だったらしい。
外で遊ぶのよりも家で本を読んだり絵を書く方が好きだった。本やアニメ、ドラマやニュースだって何でも見るし、新聞だって見る。だって、そんな私をママとパパは大袈裟すぎるぐらい褒めてくれたから。だから、子供ながらにもっと褒めてほしくて私はさらにいっぱい知識を無意識の内に付けた。悪者が最後に勝つダークな話だって、テロのニュースだって何だって見た。
だからぶっちゃけ、親の良い面を見て育った訳じゃない。どちらが善悪なのかぐらいはその時にはもうわかってたから、自分できちんと判断はそこそこにできたし、してきたつもりだ。それは普通のことだし、今でもそれはもちろん変わらない。


「ハリーのすけっちぶっくをダドがとったんだよ。ハリーが、すごくいやがってたのに、むりやりとったんだよ。
たたいたハリーもわるいけど、だどのがさんばいわるい。っていうかダドはおおげさ。
それと、ハリーをしんじないママもひどい」
「うっうそだ!ナマエがうそをついてるんだ!」
「うそじゃない。うそつきはダドでしょう?ハリーにあやまってかえして
ママも、ハリーにあやまって。ハリーは、いちおうダドにあやまっといて」
「・・・・ナマエちゃん、どうしたの?」
「こっちのせりふ。
ダドをあまやかすからダドはどんどんしゃかいてきにおくれてだめなこになっていくんだよだどはもう7さいなんだから!」


ダドが社会的とは何だと聞き、ママがポカーンと口を開けて私を見ているのを無視して私はハリーに向き合った。


「こんなことでなぐっちゃだめ。あとでべんかいするときにふりになるよ。
それにハリーのやさしいてがもったいないよ」


目の前できょとんとしている彼を、
子供ながらに実の兄と両親から守ってみせようと私はその時たしかに思ったのだ。



(それはたしか、もう六年も前の事。)

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