神童視点


今日は朝から夕方まで、丸一日練習がある日だ。朝の練習を終えて昼食を食べたあと、霧野と一緒に外へ軽いランニングへ出かけた。少し走って、そろそろ戻ろうかと門へと近づいたとき、小さな男の子2人が手を繋いで立っているのが見えた。と、次の瞬間、1人の子が躓き、それに引っ張られる形でもう1人び子も壮大に転げた。


「うっわ…痛そー……」
「だ、大丈夫かな…」


霧野もみていたようで、横で痛そうに眉をひそめていた。
泣き声が聞こえる。それはもう割れんばかりに。駆け足で2人のそばに行き声をかける。
起こして、砂を払ってやるとお礼を言われた。いい子だなと思った。
聞けば2人はおつかいに来たらしい。


「とりあえず、部室に行かないか?こっちの子、そっちの子もだけど怪我の手当したほうがいいだろ?」


霧野の言う通りだ。怪我をさせたまま、おつかいに行かせるわけにはいかない。部室に行けば救急箱もあるし、マネージャーもいるから簡単な手当ができるだろう。


「君、歩けるかい?」


男の子は少し泣きそうだったけど、目を何度か擦って頷いた。お兄ちゃん、なのかな。頑張っている姿が可愛くて頭を撫でて手を差し出すと握ってくれたので、手を繋いで行くことにする。もう1人の子は霧野が抱っこしていた。



「それじゃあ2人はパパにお弁当を届けにおつかいに出たのか」
「うんっ。パパ、ごはんたべなきゃげんきでないから」


歩きながら話を聞く。2人……今俺と手を繋いでいる宙斗くんと霧野に抱っこされている流司くんは兄弟で、しかも双子らしい。今日は初めて2人だけでおつかいに出たそうだ。


「そういえば、今日監督も昼飯忘れたって言ってたよな」
「ああ、確か……」


いやでもまさか。奥さんがいる、っていう噂は聞くけどそんな、まさか、なあ…?
霧野も同じようなことを考えているのか苦笑いを浮かべている。


「かんとく?」
「ん?ああ、監督っていうのは、俺たちにサッカーを教えてくれる先生のことだ」


霧野の言葉に宙斗くんと今までしゃくりを上げていた流司くんが顔を輝かせた。


「サッカー!おねえちゃんたちもサッカーするのっ!?」
「え?お、おう!…って、え?」


おねえちゃん、なんて呼ばれた霧野は戸惑いながらも頷く。お姉ちゃんか…まあ、小さい子から見たらそう見えるのか…見えるんだろうな…。笑いそうになったが睨まれたので宙斗くんのほうへ顔を向けた。


「宙斗くんと流司くんも、サッカーするのか?」
「うん!パパとまいにちしてる!」
「パパもするのか?」
「「うん!」」


すごく嬉しそうに頷く2人に、なんだかこちらまで嬉しくなる。
幼稚園でいつも友達とサッカーをしているだとか、幼稚園ではまだ負けたことはないだとか。でもパパの友達には負けるだけど、楽しそうに話をしてくれた。


「宙斗!流司!!」


そんな2人を呼ぶ声に顔を上げる。よく、聞く声。そこには円堂監督の姿。ぱっと同じように顔を上げた宙斗くんと流司くんはさっきよりも顔を輝かせた。


「「パパ!!」」


そっと手を放した宙斗くんと、霧野に下してもらった流司くんはパパのほうへと走って行った。…………って、…え?


「パパって…」
「監督がパパって……」

「「パパぁ!!」」
「おーよく来たな2人とも!偉いぞ!!」


驚く俺たちを余所にパパ……じゃない、円堂監督は宙斗くんと流司くんを抱きしめる。2人の顔を見て、泣いたことに気づいたのか、監督は笑いながら流司くんの涙の痕が残る頬を撫でた。


「パパのおべんとうっ!もってきたよ!」
「すいとーも!オレもってきた!」


嬉しそうに、円堂監督の腕を引っ張りながらいう2人。
かわいらしいと思うんだが、円堂監督に子供…しかも幼稚園に通うくらいの子…衝撃的すぎてなんだか…。


「本当に奥さんいたんだ…」
「いや、バツイチっつーことも…」
「何言ってるんだ霧野……」

「うんうん、ありがとうな2人とも。でもその前に、お兄ちゃんたちにありがとうって言わないとな」



今の話が聞こえたか、と思ったがそうではなかったようだ。宙斗くんと流司くんがこちらに戻ってきた。仲良く手を繋いで。


「おにいちゃん、おねえちゃん。どうもありがとう!」
「おせわになりました」


片手を上げて、元気よく言う流司くんに対して宙斗くんはお行儀よく頭を下げた。出来た子だ。本当に監督の子なのか疑いたい。


「パパにちゃんとおつかいできてよかったな」
「それと、お姉ちゃんはいなくてどっちもお兄ちゃんだからな?」


宙斗くんの頭を撫でる横で霧野が流司くん大事なことを教えるように言う。きょとんと目をぱちくりする2人は多分きっとよくわかってないんだろう。





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