あなたの手はやけに冷たいのね

徐倫ちゃんが帰ってきた!!!!

あたしは嬉しさで思わず徐倫ちゃんに抱きついた。
少し徐倫ちゃんの身体はひんやりしていて濡れてたけれど、さほど気にならなかった。
静かになった部屋にザアザアと雨の音が響く。
あたしの大好きな徐倫ちゃん。
死んだって報告を受けたときはショックのあまり寝込んでしまったけれど、こうして帰ってきたんだもの、死んだなんて嘘っぱちだわ!
その証拠に「名前、心配かけてごめんなさい」と頭を撫でてくれているのだもの。

「徐倫ちゃん、会いたかった」
普通の女の子より少し筋肉質な身体をぎゅうっと抱きしめれば、そっと背中に手を回してくれた。

「ねぇ徐倫ちゃん、どうやって帰ってきたの? 車の音なんて聞こえなかったわ!」
「ひとりとり遺していく名前が心配だわ、って思ったらここにたどり着いたの」
「まァ! 愛の力ね!」
「フフッ、そうね。……」
「徐倫ちゃん、あたしすごく怖かったのよ。とてもとても怖かったのよ。愛する人を失うなんて、あたし、とても耐えられないわ」
「あたしもよ、名前」

徐倫ちゃんはその綺麗な指であたしの髪の毛を梳いた。

「これからはずっと一緒よね?」

ぴくりと徐倫ちゃんの指が動く。
どうしたのだろう。

「徐倫ちゃん?」

返答はない。
髪の毛を梳く感触がなくなったので顔を上げれば、徐倫ちゃんの身体はボロボロと崩れていく最中だった。
あたしは思わず息を飲む。
徐倫ちゃんが泣きそうな顔をした。
そんな顔をしないでーーそう言おうと口を開ければ、徐倫ちゃんが先に口を開いた。

「……やっぱり一緒には生きれないみたい。ごめんね名前」

ゆっくりと徐倫ちゃんが手を伸ばしてくる。
ボトボトと肉塊が落ちて、絨毯にジュウジュウ溶けていく。

「大好きよ、あたしの大好きな名前」
「徐倫ちゃん!」

もはや徐倫ちゃんの面影もない、ただのドロドロに溶けた肉塊を抱きしめた。
ジュウジュウとドライアイスに触れているように熱い。

「徐倫ちゃん……」

あたしはその場に蹲って、初めて声を上げて泣いた。



目が覚めたらいつもと同じ天井が見えた。
嫌な夢を見たなァ。
でも徐倫ちゃんが会いに来てくれた。
死んだなんてそんなこと信じちゃあないけど、徐倫ちゃんに会えたことは嬉しい。
ふと胸元に視線を落とす。

「あれ?」

まじまじと見ればつけた覚えのない火傷の跡が残っていた。

「ーーーー」

息を飲む。まさか。あの夢は正夢? 徐倫ちゃんは死んだ?

……そう言えば最後に触った徐倫ちゃんは、手だけでなく全身が冷たかった。



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