死神の懺悔

※死ネタです注意



陶器のような白い肌をするすると撫でれば彼女は悩ましげに瞳を潤ませて俺の頬をその小さく細い手で優しく、優しく撫でた。

「ン…ねぇ貴将」
「なに?」
「貴将は結婚しないの?」
「俺とセックスしてる時にそんな話持ち出すんだ」

不機嫌が伝わったのか、名前は困った顔で笑ってからごめんねと呟く。

「でも心配なの。貴将は強いけど一人で生きて行けそうにないから」
「君に会うまではずっと一人だったけど?」
「私に会うまでは、でしょう?」

それもそうだねと納得すると彼女はふふ、と笑ってからまた息をついた。

「本当…心配」
「俺は結構色んな女性に注目されてるらしいから大丈夫だよ、きっと」
「そうかな?」
「でも結婚とかは…考えたくないね」

名前の美しい谷間にそっと顔を埋めれば名前は俺の髪の毛を指先で撫でる様に梳く。

「どうして?」
「君以上に愛せる女なんて現れそうにないから」
「…はじめて愛してるだなんて聞いた」
「そう?」

ずっと思ってたよと言って目の前の白い肌に吸い付けばくっきりと赤い跡が付いた。その跡が堪らなく愛おしくてそこに舌を這わせればくすぐったい、と頭を軽く叩かれる。

「私はそんな心配いらないけど…そっかぁ」

残される方も辛いんだろうねだなんて君はなんて他人事なんだろう。残す側と残される側、どちらの方が辛いかと議論しあったらきっときりがない。それ程俺は君を愛してしまっていて、愛を置いて行くのも置いて行かれるのも耐えられないと思える。いっそ二人で何処かに消えてしまえたら…と何度も思って口をつぐむ。

「名前…綺麗だ」

カーテンの隙間から注ぐ月明かりが丁度彼女の腹を更に白く見せていて、その下でふつふつと湧く赤が想像される。

「君の腹を割いたら…何が出てくるのかな」
「さあ?腑でも出てくるんじゃないのかな」
「じゃあ…君の胸を割いたら君がどれほど俺を好いてくれてるか、分かるかな」
「ふふ、かもね」
「…だといいね」

もし君の愛の形が心臓の辺りにあるのだとしたら俺はそれを大切に大切に取っておくだろう。人生で一番愛した女性の愛を囲って頭が狂ってしまうくらいの孤独感を感じて生きて行くだろう。

「でもそんなもの出てきたら恥ずかしいな」
「どうして」
「私がどれだけ貴将のことが好きかばれちゃう」

子供の様にそう言ってクスクスと悪戯っぽく笑う名前の唇をそっと食む。好きだ、愛している、行き場のないこの気持ちが君に溢れることなく伝わる様に、誠心誠意丁寧にキスを繰り返す。舌を絡めれば彼女の頬から飲みきれない唾液が垂れて枕を穢す。

「君に出会った時も君はそんな表情をしていた」
「は…そうだった…?」
「ああ」

目を潤ませて頬を上気させて色っぽさと可愛らしさを混ぜた様なその表情に酷く欲情したのをよく覚えている。それまで喰種を狩ることしか考えていなかった俺ははじめて恋を知った気がした。

「君に触れたくて触れたくて堪らなかった」
「そうだったの?」
「気づかなかった?」
「全然」

貴方顔に出ないもん、とむくれたように頬を膨らませて名前は呟く。静かな夜に二人きりの会話はゆったりと時間とともに流れていく。その場をたゆたう空気は開け放った扉から舞い込む風によって新しいものに変わってしまう。

「貴将、満足した?」
「…もう一度、シたい」
「んおいで?」

腕を広げた名前を抱きしめて白い液体を滴らせるソコへ硬いままの自身を入れていく。ぐぷぐぷという音と共に先ほど出した精液が溢れ出て行く。大っきい、と苦しげに、でも幸せそうに呟いて名前は俺に抱きついた。

「は…ナカ…熱いね」
「ふふ、冷たいわけないでしょう?」
「生きてる…」
「うん」
「…名前」

布の擦れる音しかしなくなった部屋で僕は名前をきつく抱き寄せる。頭の後ろと背中に回った腕は名前を押しつぶさない程度の優しさを持って彼女を抱き寄せていた。

「このままずっと二人きりの世界にいれたらいいのにね」
「本当に…そうだね」
「君と俺以外を全員殺したら、そうなる?」
「その前に私も貴将もしんじゃうよ」

汗ばんだ名前の前髪にキスを落として彼女のいいところを刺激してやればすぐに二人で達する。喘ぎ声と熱い息の混ざる部屋の空気がまた、風にさらわれて行く。

「名前」
「ん?」
「…時間だ」
「うん」
「…」
「貴将…」
「…ん?」

彼女の胸元にイクザを向けながら優しく、優しくそう聞き返すと名前は泣きそうな笑顔でゆっくりと呟いた。

「愛してた」

気づくと自らの頬も濡れていて、先程まで真っ白の新雪の様だった彼女の肌がまるで彼岸花が咲き乱れるような朱に変わっている。部屋を充満するのは二人分の優しい吐息ではなく、血の匂いと俺の嗚咽だけ。最期に愛してたと俺に言った君を俺は忘れることが出来るのだろうか。なぜ君は人間を喰らうもので、なぜ俺は君を狩るものなのだろうか。答えないと分かっていても君にそう問うて冷たく冷えた唇にゆっくりと口付ける。

君が置いて行った赫子に君の名前を付けて、一生それを君として愛して生きていこう。



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