銃弾が銀の弾丸だと気づいたのは、撃たれてからだった。
「副長」
「なんで、お前が、ここに」
「それは此方の台詞です。なんでこんなに早くこっちに来てるんですか」
「は」
 横たわっていた体を勢い良く起こすと、弾みで腹がずきりと痛む。それに悪態を吐きながら周りを見渡すと、つい先程までいた戦場とは打って変わってそこはだだっ広い部屋のようなところで、あいつは困ったように笑っていた。
「副長、約束したのに破らないでくださいよ」
 あの襖から出られるんで、とっととこの部屋から出てって前線に突っ込んできてください。凡そ上司に対する口振りとは思えない口調で指差す先に、襖が二枚。俺に出てけと言った、こいつは?
「……お前は」
「わたしは無理です」
「何馬鹿なこと言ってやがる。お前も来るんだ」
「だから言ってるでしょう?わたしは」
 とんと背中を押される。不意打ちでよろめいた俺に、眉を下げて笑うお前を遮る襖。
もう、死んだんです

 はっ、と目を開けたときには、そこは戦場じゃなく自室で、俺は布団に寝そべっていた。ふと見ると腹から背中にかけて全体に包帯が巻かれている、恐らく山崎か雪村か。垂れた前髪をかきあげると、ふと先程までの夢のような情景が思い浮かぶ。ああ、何で俺は忘れていたんだ。
「…約束、だったな」


「副長」
「こんな夜更けにどうした」
「約束してください」
「は?」
「もっと部下を頼ること、体を大切にすること」
「何言って…」
「新選組の要の貴方に、倒れられたら困るんです、ほら」
「…指切りって…餓鬼かてめえは」
「わたしが言わないと、土方さんが無茶するからですよ」
「あってめ」
「指切りげんまん嘘ついたら針千本のーます」
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