先ず朝起きて、隣に置いた携帯で時間を確認しようとしたわたしが掴んだのはあの角張った機械でなく謎の感触。こう、サラッみたいなまるでそう艶々の髪の毛…ぼうとした寝ぼけ眼が完全に覚醒した瞬間だった。
「!!?」
 掴んでいたのは見知らぬ人の頭で、わたしは声にならぬ声を上げながら慌てて手を離して後ずさる。筈がその手はその見知らぬ誰かさんに掴まれる。もうこの時点でわたしの頭はキャパオーバーしていた。
「誰だテメェ」
 睡眠の邪魔してスイマセンッしたァァア!!地を這うような低い声に思わずそう叫び出しそうになる。布団から出たその人は恐ろしい程鋭い目でわたしを睨みつけていた。名乗ればいいのか、土下座でもしたら許してくれるだろうか…恐怖で喉をひくつかせるわたしに構わず包帯で片目を隠した強面風イケメンさんは何処に隠し持っていたのか太刀を鞘から抜き出そうと、わたしの手首を握り締めながら器用に片手で刀を掴む。えっ刀ァ!?
「見かけねェ顔だな…いつの間に鼠が潜り込みやがったか」
「ひっ」
「生憎俺は鼻がいいんでなァ、寝首を掻くつもりだったんだろォが残念だったな」
 鼠とか寝首を掻くとか、さっきから一体何の話だ。そもそもわたしは学校があるからと早々に床についた筈なのに、何故こんな部屋で見知らぬイケメンと同衾してるんだ。意味わからん。もっと意味わからんのはわたしが今何故か殺されそうになってること。
「あっ、あなたこそ」
「あァ?」
「わたしは普通に自分の部屋で眠ってたのに、なんでこんな訳わかんない部屋で、なんで初対面のあなたに殺されなきゃいけないんですか!」
「…」
「もう本当ふざけんな!帰してください!つかここ何処!?」
 そこまで言ってハッと我に返る。恐る恐る顔を上げれば彼の人は無表情でわたしを見下ろしていた。馬鹿かわたしはァ!刀持ってる明らかヤバそうな人に反抗するとか!自分で自分の寿命縮めるとか阿呆かっちゅーねん!パニクった頭は時として関西弁を出すらしい。いやそんなことはどうでもいいんだ。兎に角殺される前に早く此処から逃げなければ。
「今お前が乗っているのは船で、此処は俺の私室だ」
「ああそう船……船?」
 いやいやいや、船て。船はないよそれは有り得ない。それじゃあわたしはいつの間にかテレポートしたことになる。へえすっごいわたしって超能力者だったのかーってんな訳あるかボケェ!!
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