わらえる程頭弱いよな、お前。凡そ幼馴染みに向けるようでない言葉を吐き捨てた花宮くんは、わたしの両手首を片手でいとも簡単に締め上げていく。ぎりぎりと爪が皮膚に食い込んでいたいと声を上げたのにも構わず、今まで見たことのないぞっとする程ひややかな眼を花宮くんはしていた。
「なにして」
「お前さ、俺のこと好きって言うなら」
 花宮くんの白く細長い人差し指がわたしの頤を撫で、そのまま首筋をなぞり胸元の学校指定の白いワイシャツにいきたつ。いま、わたしはなにされようとしてるの。
「ヤらせろよ」
 死刑宣告のような重く冷たい響きとは裏腹に、花宮くんの顔は八重歯を覗かせた笑みを孕んでいた。わたしが我に帰り意味を理解した頃には花宮くんの片手がワイシャツをたくし上げていて、わからない、この人はほんとうに花宮くんなの、こんな、こんな。呆然とするしか出来ないわたしに花宮くんは何時の日かした、わたしに見せたあの暖かく優しい笑みをうっすら浮かべる。そのままわたしの耳元に唇を寄せてでもその冷たい片手はわたしのお腹を這っていて。
「誰が好きになるかよ、お前みたいな勘違い女」
 ああかみさま、これはなにかのわるいゆめなんでしょう。ならはやくこのゆめからさめてせいふくをきて、となりにすむはなみやくんにいつものようにおはようをいいにいこう。
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