▼慣れない乳房/シカマル



私は已然として、彼の指が私の乳房に触れることが、なんだか堪らないのであります。辱められているような、緻密に精巧に愛され尽くしているような、はたまた、甘えたの彼に私の乳房を触らせてやっているという気持ちまで、絡み合うように私の心を乱します。ところで、乳房とは、やはりちぶさと読むのが相応しいのでしょうか。にゅうぼう、と読むには、いま少し情のある字面に思います。ですから私は、ちぶさと読みましょう。
彼は今宵も私の乳房に指を這わせました。私を組み敷いた彼。一糸纏わぬ姿の私達は、狭いシングルベッドで、耳鳴りのするような静寂に身を潜めていました。彼の指が触れた瞬間、細く短く息の詰まった私を彼は見逃しはしなかった。酷く緩やかに、乳房の下の方で押したり撫でたりをしています。私はじれていました。早く彼の指で、しっかりと柔らかく、触れて欲しかったからです。彼は尚も親指の腹から根元にかけてを、私の乳房の膨らみの際で滑らせています。
早く。私は意を決して彼に催促の言葉を囁きました。囁くというのも、意図したことではありません。彼のやわやわとした愛撫に包まれながら平静を保って言葉を紡ぐには、私はあまりに経験の不足が過ぎました。
私の言葉を聴いた彼は、するりと黒眼を私の方へ向かせると、艶めかしくほほえみました。酷く艶めかしく、私には見えました。
「いつまで我慢できんのか、試してたんだけど」
彼の唇は、今まで私の身体中に押し付けられたり滑ったり、吸ったり舐めたりを繰り返していました。それが今度は、私の乳房の方へと降りてゆきます。私は彼の薄い整った唇が、私のささやかな乳房のてっぺんにあてがわれる瞬間をこの目で見ました。身体中が息を潜め、その感覚に捕らわれてゆきました。生暖かい舌がそこを這い、薄く伏せられた彼の目や睫毛や瞼も全て官能的で、痺れる指先や鎖骨を納めることさえ不可能でした。
彼は私の顔をふと見やると、「…その顔イイ。オレが我慢できねー…」左手で私の乳房を包み撫でながら耳元で呟きました。彼の唇が耳から頬を伝って、私の唇を塞ぎ、時折漏れる彼の息が、纏めて全て愛しいのです。
唇を合わせながら、人差し指か中指かで、乳房の突起を取られました。背が反り、言葉にし難い快感に涙が滲みます。嬌声とも呼ぶべきものが私の喉から出るのを見計らって、彼は唇をほんの少し離し、わざわざそれを部屋へ響かせるのです。息継ぎをするかしないかで再び唇が重ねられました。いつまでたっても慣れない乳房。彼によって弄ばれ、愛され、時には甘えの対象になる私の。
私の膝裏に手が入り、足を畳むように開かれてからは、そこからは、あまり覚えていません。





慣れない乳房





ヨリコが途切れるように眠って、20分程が経った。頬に掛かる髪がちらりと滑った。指先で退けてやると、小さく息を漏らす。同時にもそりと動いたから、布団から鎖骨が覗き、その下、膨らみの始まりに光が当たった。先程まで彼女をよがらせていた手の感触が思い出されて、思わず目を逸らした。何度彼女とこうしても、毎度どうにも堪らなかった。陶器のように滑る肌や、例えがたい柔らかさ。「…いつまでたっても慣れねェな、オレ」情けない呟きに応えるように、ヨリコが寝返りをうった。





20130405



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