「邪ー魔ーカーカーシー」
「さーむーいーうーごーけーなーいー」
布団を畳みたいわたし、まだ寝ていたいカカシ。語呂はいいけれどテンポは悪い。蓑虫みたいに布団で巣をつくって、もうすぐお昼だというのに起き出す気配がない。カカシを布団ごと揺さぶる。笑うカカシ。怒るわたし。段々なんでもよくなって、黙ってゆさゆさカカシを揺らしていると、布団から手が生えてわたしの腕を引っ張った。なにがどうなったのか、視界が落ち着いたときには蓑虫カカシに馬乗りになっていた。あははは、おもたい。カカシが笑う。
「おもたくないでしょ」
「んー嘘はつけないな」
「おもたくないって言え」
「おもたくない…くない」
そんなこと言うやつはこうだ。わたしは体ぜんぶでカカシにのしかかる。卵を温める親鳥のように、少し大きさは足りないけれど、カカシを覆ってくっついた。カカシがなにか言うのを待っていたけれど、なにも言わない。耳をそばだててみる。寝息が聞こえる。
「これ寝るな!」
「いて…いま眠りの導入部だった」
「せっかくお休みなのに無駄にするのいやでしょ!」
「んー…2人で一緒にいるなら無駄じゃないんじゃない」
そんなことをいわれたらわたしが黙るのをカカシは知っている。なにも言えない。大人しくなったわたしの背中をあやすように叩いて、おもたいけどあったかい、囁くように呟いた。わたしはカカシにぴったりくっついて、早朝まだ暗いうちに部屋を出たカカシの背中を思い出す。久々の非番、昨夜から泊まりにきたカカシは、わたしが来てという前にそれを約束してくれた。寝ているわたしを起こさないように、静かにあの場所へ向かった彼をわたしは知っている。朝早く、誰もいない、彼の仲間が待つ場所。そしてわたしがいつも起きる時間より少し前に戻って、またそっと布団に潜り込んだ。寝たふりのわたしに気付いていただろうか。ただいま、ごめんね。囁いたカカシにわたしはなにも言えなかった。泊まりに来たって、一緒にいたって、カカシは絶対にあの場所へ行く。わたしに気づかれないように行く。でもわたしが気づいていることをカカシは知っているし、そのことをわたしも知っているけれどカカシには言わない。わたしは蓑虫のカカシに、言う。カカシい、謝らなくていいよ、わたしはカカシを待つし、あなたの背中のそばにずっといるよ、おかえり、カカシ。
「……まいったなあ」
ばさっ、ぐるん。視界がまわった。カカシとわたしはさっきと体勢を逆にして、蓑虫のわたしにカカシが覆い被さっている。カカシは困ったように眉を眇めて、それでも少し微笑んでわたしを見つめた。そして痛いくらいに抱き締められる。
「…おもたい?」
「…おもたいよ、うれしいけど」
「オレもさっきうれしかったよ」
「そんとき言えばいいのに」
「……好きだよ、すごく」
「うん、わたしも」
わたしも会いたいな、あなたの大切なひとたちに。気に入ってもらえるかな。そう言ったわたしにカカシは、きっと仲良くなれるよ、と笑った。




20130305
(20130402編集)



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