賑やかに屋台の並ぶ通りを抜けて、こんもりとした木々の茂る公園に行った。おばあちゃんがくれた下駄が、カラン、カラン、コロン。バランスの悪い音がする。子どもが落ちると危ないから今日だけ外されたブランコの、ポールにもたれた彼が見えた。あと数メートル。立ち止まる。公園を走り回る子どもたちに、口元を緩めているのが分かった。襟ぐりの広いTシャツから、鎖骨がのぞいていた。思わず前髪に手が滑る。左に向けて撫で付けてから、深く息をした。
「ナールト」
「・・・お、浴衣だ」
「似合うかな」
「うん、すげー似合う」



久しぶり。うん、久しぶり。ぽつりと言い合えば、それで充分だった。会わなかった1年は、その声が満たしていった。ひぐらしが鳴いている。秋がすぐそこで待っているような、乾いた風が、不似合いに夏を駆けた。夏が終われば、彼はまた、自分の場所へ戻る。最後の花火が迎えに来るのを、私はゆっくりと恨んだ。







夏のヒーロー
20130627

title by YUKI




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