例えば指先からボロボロと崩れていくようなわかりやすい壊れ方をしていれば俺だったり他にも浜田の周りにいるヤツらの誰かしらだったりがいち早く気付いて、もうそれを止められなかったとしてもなにかしら支えてやったりだとか一緒に嘆いてみたりだとか、とにかく浜田のためになにかする事ができただろうと思うのに、よりによって浜田は一番静かでわからない方法で壊れていってしまったからこんな手遅れの状態になるまで誰も、俺も、何にもしてやることが出来なかった
いやそれこそ言い訳だ、他のヤツはともかく俺は自分では誰より浜田に近い位置に立っているつもりだったわけだから、普段は全部が顔や態度に分かりやすく出る浜田が肝心な事ほど、如何に空元気とやせ我慢が堪能になるかなんて薄々察していたじゃないか、優しさだけで危ういところへ自分を簡単に追いやってしまえることに恐ろしさを常々感じていたじゃないか
そうだというのに浜田の屈託のない笑顔がその皮一枚隔てた向こうで何時から歪んでしまっていたのか俺は今でさえ理解ってないなんて、だれが一番近いって?嘲笑が聞こえる(どうせ幻聴)
一人きりの浜田をどんな気持ちが巡っていて心臓を侵すときに何を感じていたのかなんて、今更反芻して自分の無力さを悔いて死にたくなったって、俺にそんな資格なんてありはしないと自己嫌悪すら許されやしない

例えば指先からボロボロ崩れていくようなわかりやすい壊れ方をしていれば俺が一番に気付いてやれたのに、よりによって浜田は一番静かでわからない方法で壊れていくことを選んだ
俺はいつだって理不尽な理屈で取り囲んで浜田はいつだってその理不尽な理屈に簡単に折れて「泉にはかなわないなあ」て笑っていたのにそれの仕返しがこんなに酷いなんてそれこそ許せない、こんなに巧妙にこんなに周到に、俺は「浜田なんかにかなわないなんて」と悔しがることだってできないじゃないか、そんなのは狡い酷い痛い悔しい悲しい寂しい






(指先からボロボロと崩れていくようなわかりやすい壊れ方をしてもらわないと俺には浜田に優しくしてやることも咎めてやることもできなかったという事実と、もう何を削っているのかもわからない浜田の笑顔が気管をゆっくり塞いでいく)
(苦しい。苦しいよ。なあ、これをずっと我慢したらおまえとおんなじとこまでいけるかな。でもきっと俺はおまえみたいに耐えきったりできないんだろうな。だから理解ってあげられなかったんだろうな。これからも理解ってあげられないんだろうな。ああ死にたい。どうせ俺じゃそれすら出来ないんだろうけど。)


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