思えば最近なんだかやばいとは思っていたのだけれど。夜になったら急に不安みたいな絶望みたいな寂しさみたいな、もしかしたらそれ全部を混ぜ合わせたような、そんな圧迫感の塊が頭も胸もギチギチに締め上げてきた。
助けて!叫ぼうとして思い切り息を吸い込んだところで誰に向かって言えばいいのかわからなくて酷く困った。吸い込んだ息は空気を震わすことはなく、重く重くなって地面へ落ちていった。

携帯のアドレス帳を一巡り。無機質な文字が並んで友人達の名前を綴っている。ボタンを一押しする度に気の良い彼等、もしくは彼女等の顔が浮かんでは消えていく。
友人達は皆、一緒にいて楽しくて、もちろん好きで、だけど。たけどどうしてだろう。こんな時に頼っていいと思える人が、誰もいない。それは皆が冷たいからとか、そんなんじゃなくって。こんな根拠も原因も定かじゃない衝動的な気持ちに溺れて助けてなんて、自分でもおかしいと思うのに伝えられやしないじゃないか。
ピ、小さな電子音と共に選択された名前に指が止まった
『泉 孝介』
泉。泉だったらきっとこんな俺でも受け入れてくれるかなあ。きっとそうだろうな。いつも澄ました顔をしている元後輩は本当は誰よりも優しいのを知っている。泉だったら泉だったらきっとこんな何もないのに馬鹿みたいに苦しがってる俺も受け止めてくれる。大丈夫だって言ってくれる。心配してくれる。そんな思いがあったのだけれど、結局そこかからメールをすることも電話をすることもできなかった。そうだ、だって泉は今頃もうとっくに寝ているじゃないか。明日はまた朝練できっとすごく朝が早い、だからこんな時間に俺なんかのことで泉の邪魔なんてしたらいけないんだって次々に理由が出てきたものだから、そうだよダメだよって焦って結論付けた。
そうしたらもう他の誰も彼もそうじゃないかって気付いて、携帯電話を閉じると視界に入らない所まで放った。ボタン一つで誰とでも繋いでくれる便利な機械も今はただのおもちゃ以下。

たいへんだ、俺の世界はとても孤独だったんだ。はたと今まで過ごしていたあらゆる関係がホントはどれだけの薄っぺらいものでしかなかったのかを突きつけられたようで、頭や胸を押し付けてたそれが鋭利なものに変化してますます痛かった。だけどもう助けを呼ぶ相手もいないって分かってしまったものだから、どうしようもなくって正常なのに息苦しい気がする呼吸を深く繰り返しながら悲しくて目を閉じた。



(だれかだれかだれかだれか)










受け入れてくれる自信がないという話。拒まれたらそれこそ世界が終わってしまうじゃないか。
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