AIUTA 2
数日が過ぎました
再び黒い男は乗り換えの駅のプラットホームに彼の姿を見つけます
彼は金髪で長身でした
あの透けるような瞳をぼんやり思い出します
やがて電車が到着しました
彼は音で気付いたのか少し前の女性に距離をつめます
とんとぶつかり、女性はいぶかしげに彼に振り向きました
―あぁ、と男は思いました
止まった電車の扉が開きます
しかし彼は咄嗟に入り口が分からずうろうろします
方向の逸れた彼に向かって、先ほど不審げに彼を見遣っていた女性が手を伸ばしました
―――あぁ、
しかしその手は届かず、彼女が振り返り振り返りしているうちに、彼は違う扉から乗車しました
見届けて彼女は乗車しました
男も彼女の後ろから乗車しました
やがて下車駅に電車が止まります
あの左右に分岐して再び交わる階段を降りながら、向かいの階段から彼の腕を中年女性がひしと掴んで降りてくるのが目に映りました
改札に手を導かれ、彼は数日前に男に向けたように、その女性に向かってあの言葉を言いました
あの笑顔で
流れていきます
流れていきます
彼と同じスピードで
周りの人間誰も彼もが
色とりどりに開いたパラソル片手に
振り返り振り返り流れていきます
神に選ばれた彼はひとのこころばかりを映します
ゆったりした流れの一部になりながら、男は口元をゆるめました
―――あぁ、なんだかまだ、捨てたもんじゃない
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