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* * *
そうして二人の身が縮んでしまってから丁度一週間後。黒鋼は知世姫に呼び出され膝を突き合わせていた。
「で、なんだ」
「見つかりましたわ」
細い指がすっと紙面を差し出す。そこには旧い文体で月の魔力を持つ媒体によって異世界の術師の魔力が発動された事例が記されていた。そして除術にも成功していたということ。
「・・・!これは!」
紙面に視線を走らせ、さっと一読した黒鋼の表情に焦りが浮かぶ。顔を見合わせ、頷く知世。
「今晩しか、ないのですわ」
その古文書にしるされていた解除の期日は術の発動から七日以内――今夜までだ。
「それで、どうすりゃいい」
指示を仰ぐ黒鋼にその方法をそっと告げたのだった。
*
細かな雪が激しく降り吹雪いている。
今日はそのまま帰って処置を講ずるようにとの命を受け、黒鋼は寒々とした帰途を急ぐ。悪天候の為にはっきりとは分からないが、既に陽は傾いているはずだ。珍しいほどに荒れる天候に足をとられながらも、家に着く。しかしそこにはファイの姿がない。
黒鋼は嫌な予感を感じて再び吹雪の中へと駆け出した。粉雪が柵のように足に絡みつく。
いつもそうだ。
彼はいつも肝心なときに黒鋼を頼らずいつも単身で動こうとする。
それを黒鋼が望んでいないことを、彼も頭では分かっているはずなのに。
今のファイが向かうところは一つしかない。ファイはきっとあの場所にいる。
mae tugi