the way to happy Christmas | ナノ






彼に願ったのは、あの紅い瞳に本物を感じたから。
そして彼を見つめる蒼い慕情に、気がついてしまったから。





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暗闇の中、ふわふわと浮いたような感覚があった。
静寂の中でユゥイは自分の意識と向きあう。目が覚めても満足に身動きすることすらままならなくて何も出来ず、逃げ続けていた自分の内面にようやく出くわす。

今まで自分の存在はきっと、ファイにとってお荷物以外の何者でもなかった。
こんな自分を背負っているのに世界に浮いたファイの優しさが綺麗過ぎて悔しくて、…心が荒んでしまったのはむしろ自分の方だった。

少し嫉ましかったのかもしれない。辛いことを考えないように目を逸らすことのできる兄のその器用さが。そして、その純粋さが。

自分には到底出来ない真似だった。けれど彼にはいつだってそう在って欲しい。
いつまでも、どんなに儚くてもどうか清廉な存在で――

せめて、くすんだ感情に支配されてしまったそんな自分の代わりに。

常にユゥイの内面には相反する想いが混在していた。ファイが受けてきた仕打ちに視線を逸らすことも出来ずに全てのことが心に刺さる毎日だった。自分の分身が晒される一部始終をただ見守るしかなかった。年を重ねる毎に何度でも廻り来るクリスマスという残酷な日を指折り数え、逃れられずにただ早く去ってくれるように、と願うしかなかった。

ブォオ、と強風が飽きることなく窓を叩く。最近の天気は大抵こんな感じだ。雲が風に巻かれて高く舞い、その隙間から光が零れては部屋に差し込める。しかしそれは目をはっきりと覚まさせるには十分な光量ではない。浅い眠りに燻っていたユゥイがはっと気が付いた場所はやはり自室のベッドだった。いつものように横たわっている自分に虚しさを感じる。陽は既に高い。寝汗をかきつつ机に立てかけられた小さなカレンダーに視線を這わせた。

今日はクリスマスだ。

何とか起き上がれないものかと身じろぎしてみる。しかし未だ思うように動けない、そんな両足が呪わしい。弱弱しくベッドに縛り付けられるしかない自分の状態に、布団の中で両掌をぐっと握った。

ファイにとってお荷物な自分。いつだってそうだった。そんな自分がどうしようもなく悔しい。悔しい。悔しい。 


―――――悲しい。









mae tugi