the way to happy Christmas | ナノ


 



冷たい空気が屋上に吹き込んでくる。風が雲を巻きこんでは高く高くへと連れて行く。真っ青な空の下、ブォオと金属の重い扉が開く音がする。待ち人来るというやつだ。

壁に背を預けていたその学ラン姿の学生は静かに目を開く。大柄で黒い髪の彼はそこで腕を組んで立っているだけでどこか迫力がある。そんな彼に向かって、現れた痩身金髪の学生は無言のままに物体を投げやった。

パシッ、パシ。


大柄の学生、黒鋼は向かってきた焼きそばパン、それに続くバーガーを難なくキャッチする。

「さすが黒様ナイスキャッチー」

近づいてきた金髪の学生、ファイはブラックの缶コーヒーを手渡した。自分はいちごミルクのストローを袋から取り出してパックに差してちゅうと吸う。そんなファイに向かって黒鋼が口を開く。

「つか、おかしいだろが」
「えー。何がー」

どうしたのだ、とちょんと小首を傾げるファイの金髪をぶわりと風が浚う。そんなファイの様子に眼を細めながら黒鋼は、人差し指で鼻をさすり軽く啜ってから空気を吸い込んだ。

「今十二月だぞ!なんでこんなさみぃところで昼飯食わなけりゃなんねんだ」
「だってー。校内で二人きりになれるとこなんてここしかないし?」
「んなもんどこで誰と食おうが一緒だ!」
「黒ぽんつめたッ。カラダから入ったオレなんてやっぱりやっぱりなんだー!」

わーっと小ぶりの顔を白い手で包みこんで金髪を揺らす。

「ウソ泣きすんじゃねえっ。あれは、成り行き上、仕方なくだな、」
「うわーんうわーん!黒たんがオレのカラダ目当てだったってゆったー」
「んなこと断じて言ってねえ!」
「・・・『成り行き』上〜…」

ぶぅっと上目遣いに黒鋼を見上げたファイに、ふぅっと息を吐いた黒鋼が金髪の頭を大きな掌で引き寄せる。

「…だから、違ぇよ」

その紅い瞳に嘘偽りのない優しい色を感じ取ってファイの表情はコロリと変わる。

「うんわかってるー」

何でもないことのようにあっさり言い放って、黒鋼の掌に自ら金髪を擦りつけてからフワっと離れる。そんな様子をまるで猫みてぇだなと思って見る黒鋼の視線の前で、ファイはへらへらとマーガリン入りホットケーキの封を開けるとカシャリと屋上のフェンスに背を持たれかけさせ、嬉しそうにその甘味にパクついた。そんなファイの行動の一部始終に黒鋼はやれやれと新たにひとつ大きく息を吐いた。

「たく、またそんな甘いモンばっか食ってんじゃねえよ…」

ぱちぱちと瞬きしながらもファイはまた一つパクリとホットケーキを口に入れる。只でさえ栄養不足だったファイの身体を気遣ってのことだったが、そんな黒鋼の意図に気づかずにかきょとんとした表情を浮かべている。
それからぺろりと口の周りを舐めながら「あ、」と気が付いたようにファイが再び口を開いた。伺うように黒鋼の紅い瞳を覗き込む。


「そーそー黒ぴょんさぁ、今日なんだけどー…」
「ああ、わかってる」

ファイの言葉に黒鋼が頷いた。







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