月下でのそれはまるで、神聖な儀式のようだった。
けれどこの儀式にいったい何の意味があるというのだろう。
彼を受け入れれば、何が変わるというのだろう。
その時のファイにはわからなかった。
だけど、彼の誓いを受けて、一つ、心臓が高鳴る。血が微かに蠢いて、身体に囁くように巡り始めたような気がした。
彼の口づけを、彼の覚悟を今、受けているのはいったい誰。
それまで身体が自分のものではないような浮遊感に包まれていたファイの指先がピクリ、と動いた。
ゆっくりと黒鋼がファイの制服の前に手を掛ける。ファイの瞳に怯えた色のないことを確認するとその衣服を少しずつ剥がし始めた。
もう、隠すことのないように。自分の前でだけは本当のファイで居られるように。
そしてファイと一つになってユゥイを待つのだと、そう、彼の前で誓いを立てるために。
ファイは自分さえも知らない自分をユゥイに晒しているようで、混濁した意識の中、酷く倒錯的な気分だった。
しかし自分が黒鋼を受け入れる為に、彼の首に手を回したことだけは何とか覚えている。
黒鋼はファイのシャツを脱がし、生まれたままの姿にしていまだ目を覚まさないユゥイの前でその身体を抱く。弱ったファイの身体を壊してしまわないように、黒鋼なりに精一杯の時間をかけて。それでも苦しそうに喘ぐ彼の金糸をあやすように優しく大きな手で包み込みながら。
そのまま行為はやがて月が堕ちて真っ暗だった空が、ほの暗く明かりを受けて斑に窓に映し出されるころまで続いた。
mae
tugi
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