男がファイの唇を舐め、舌を侵入させようとした瞬間に襟首を捕まれる。
「?」
それに男が気づくと同時に、ガッという鈍い大音量が彼の耳を打つ。側頭を強く殴打され、男はファイの上に崩れ落れていく。
黒鋼はそれを許さず男の首をグッと掴み直しファイから遠ざけようと、己と同等ありそうな彼を引き上げつつ蹴り上げた。
男は最初の一撃で軽く脳震盪を起こしていたのだろう。完全に白眼を剥いている。
そんな男になど見向きもせず、黒鋼はファイへと向き直る。
壁に凭れたまま、着衣を乱された彼は、ぼんやりと黒鋼の顔を透明な蒼に映していたが、やがて小さく口を開くと言った。
「あ―――‥黒たん…」
「―――っ!」
力なく、笑う。
力で無理やり押しつけられていたまま、そのまま身動ぎすらしない状態で、微笑む彼に黒鋼は言葉を失った。
予想だにしていなかった。まさかこんな事態になっているなんて。
無言で乱れた制服を整え、ファイの腕をぐいとつかむと為すがままの痩身を肩に担ぐ。
「黒‥たん?」
背中から小さく声が掛けられる。どこへ行くのか、と聞いているのだろう。
「――お前んちだ」
「…じゃあ黒たんもユゥイに会えるねぇ…」
柔らかい声で呟くようにそう言うと、黒鋼に身を預け、ファイはそのままゆっくりと意識を手放したようだった。
mae
tugi
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