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「………?」


髪を掴まれ男の顔に顔を向けさせられる。

この男はいったい何を言っているのだろう?
よく、意味がわからない。

男の意図が掴めず、蒼に疑問の色を浮かべて不思議そうに男の顔を見やる。すると目が合い、向けられた男の不気味な笑みに本能的にぞっと背筋を凍らせる。

――気持ちが悪い。

男は嫌悪の浮かんだ蒼い両瞳に、確かに自分の姿が映っていることを確認すると、満足げに顔を歪めて髪から手を放した。それから左右両手でファイの襟を鷲掴み、制服の中に舌を伸ばしながら顔を埋める。

(この男何を‥)


ファイは男のしようとすることがまだ予測できず、とにかく自分に近づいてくる男の頭を押し返そうとする。しかし血の通っていない指先は思うように動かない。


吐き出される男の荒い呼吸を近くに感じて戸惑うファイの鎖骨を、ねっとりとした舌が辿る。

「――ッ!!」


びくんと身体が反応を示す。大きく蒼い目を見開き全身には鳥肌が弥立つ。
そんなファイの反応を楽しむように、男は笑みながら舌でねとりとなめつけた。



まさか。



男の意図に気づいて一瞬呼吸が止まる。信じたくないがそうなのだろう。
力の入らない腕を無理矢理持ち上げた。

とにかく男を自分から離そうと、頭と肩に手を置き突き放そうする。だがなんとも体勢が悪い。ろくに力が入らず、突っ張ることもできない。

弱々しい抵抗はまったく意味を為さず、その腕は捕まれることもなく行為が続行される。精一杯の抵抗すらも無視され、ファイのプライドは酷く傷ついた。

無遠慮な男の動きはやがてファイの身体を押さえこんで本格的にのし掛かってくる。
最悪の状況が頭を過る。

このままでは不味い。何とかしなくては。

首筋にかかる男の益々荒くなる吐息に全身で吐き気を感じつつも、何処か冷静な頭で考える自分がいた。

無意味とは分かっていても、とにかく拒否を示そうと身体が拒絶の言葉を吐き出そうと試みる。


「――や、め、ひゃあ!」


気道に在った空気を押し出すように途切れ途切れに絞り出した声が、舌の愛撫にかき混ぜられ悲鳴に変わる。
女みたいに高い自分の声にドキリと心臓が冷たくなる。



こんな声、知らない。知らない。気持ち悪い。

自分の声が信じられない。

上げてしまった声に愕然とするファイに構わず熱っぽい吐息が舌が素肌を這い続ける。


「ぅ…あ‥」

全身に起ち続ける鳥肌に包まれ、これ以上あの声を出したくなくて、為す術もなくきゅっと顔を伏せた。









mae tugi