信じられない現実がファイの胸を貫いた。
無意識に胸に手をやり冷や汗のかいた手指を握りしめる。視界に白い靄が架かる。もう何も聞こえない。聞きたくない。
白い視界に霞むように現れてくるのは数ヶ月前の記憶。
彼らの顔には確かに見覚えがあった。あれはユゥイと出かけた時だった。その時はお互い制服ではなかったが、近すぎず遠すぎない処から自分たち兄弟を尾け、しつこいくらいにじっと見てくる彼らの姿があった。そしてその後、ファイがほんの少しユゥイの近くを離れたばっかりに。
ユゥイは―――
―――寒い。
カタカタと微かに膝が震える。立っていられないくらいの虚脱感がファイを襲った。
ユゥイの事故は
仕組まれたものだった?
わざと?
聞いてしまった。
単なる事故の筈はなかったのだ。だってユゥイがファイを置いていくわけがない。
ユゥイはこれから輝かしい未来があって。ファイはそれを成就させるための影として生きていて。
知りたくなかった。
けれど突きつけられたのは冷たいばかりの現実。
知りたくなんてなかったんだ。
オレたちはただ、二人生きたかっただけなのに。
息を飲むように心臓がさらに一つ、大きく波打った。それを合図に鼓動は小刻みに早まるばかり。自分の半身に向けられる悪意に言い様のない吐き気を覚えた。
胸の辺りでシャツを鷲掴んで込み上げてきた呼吸を荒く繰り返す。何時からかこめかみは汗に濡れ、留まることなく流れ落ちていく。とにかく肺から空気を押し出すことだけに専念する。吐いた等量空気が吸い込まれる。
望んでもいないのに体内へと返ってくる生きる糧。
息がうまく出来ない。
吸いたくない。
全てを受け入れたくなくて
纏わりついてくる全ての物を、ひたすら拒み続けた。
垣間見た外の世界は――――
きらきらと無条件に尊ぶべきもので、苦しいくらいに焦がれていたのに。
そんな
ファイがユゥイを放とうとした
いつも憧れてたこの世界は
思ったよりも
キレイなんか じゃ
なかった み た い だ
mae
tugi
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