「あははははは」
指を差してファイが笑う先には黒鋼の顔。
・・・その顔には○△□、×までが、ところ狭しと描き入れられていた・・・・・。
羽根つき
今ふたりがしているのは日本国の「お正月」の遊びである。
え?
なになに、どうして今頃羽根つきなんてしているのか、ですって・・?
・・・
そこは深く考えない方向でお願いいたします!(キラキラキラ)
カコン
カコン
カコン
キラッ
シュッビッ
ファイが瞳を光らせ力を込めることなく打ち返すと、羽根はちょうど黒鋼の脇の微かなすき間に滑り込んでいく。
「のあ!?」
ポトッ
「わぁい!またオレの勝ちぃ〜」
「くそう、もう一回だ!!」
「いいよう〜。でもその前にー」
「ぬあ?」
ふふふ、と筆を構えて黒鋼に近づく。
・・・ファイさん、笑顔が黒いようです。
ふふふふふふ
ぐるり
そうして新たに黒鋼の目を墨で囲ったのだった。
「くっそ〜」
もともと手先が器用で遠距離用の武器を得意としているファイは、こういう遊びに関しては黒鋼に対して圧倒的に有利だ。
負けず嫌いの黒様はやっぱり一矢報いるまではあきらめません。
でりゃ
ほっ
とっ
おいりゃ
黒様奮闘中。
掛け声とともに盛んに攻めます。そんな黒様入魂の一撃を、ファイは全てかろやかに返していきます。だっていくら威力があったって、黒様の玉は全て直球どストレートなんですもの。
ここは1つひねりが必要なようです。
「あははは〜」
カコン
カコン
「ファイ」
「なぁに〜」
「好きだ」
ぽとっ
「・・・・」
あまりに然り気無く突然の告白に、ファイは呆気にとられてポカンとする。
「俺の勝ちだな」
「・・・〜〜〜ず〜る〜い〜」
徐々に真っ赤になってゆくファイに向かって黒鋼が勝ち誇ったような笑みを向けた。
今回ばかりは黒様の勝利。
***
その後―
「仕方ないな〜。じゃあ、ハイ黒っち」
そう言ってファイはたっぷり墨の付いた筆を黒鋼に手わたした。
・・・が、
きらきらきらきら
目を閉じた天使も恥じらうような無防備な表情のファイ。
(・・・か、描けねぇ・・)
墨だらけの顔で立ち尽くす黒鋼だった・・・。