ふんわりふわふわの金の猫っ毛。
朝日を浴びてきらきらと。
そよ風になびいてそよそよと。
色づいて煌きます。
でも別にそれはトリートメントを念入りにしている結果なわけではないのです。
その持ち主は、良く言えばとっても、おおらかだったりします。なんといいますか、
自分のことには無頓着・・・?
初夏の河でファイさんが足をひんやりとつけています。
暑さが苦手なので蝉の鳴き声が聞こえ始めたころから、橋の下の浅瀬がファイさんのお気に入りの場所です。
朝からお城の御用を手伝うようになってからというもの、ぽかぽか暖かな日の昼休みにはこれがファイさんの日課なのです。
ひょこ
「・・・おい」
「んー?なあに〜黒たん」
ファイさんの頭上、つまり橋の上から黒鋼さんの呼ぶ声が聞こえます。
「寝癖たってるぞ」
黒鋼さんの位置からでも、きらりとなびくファイさんの寝癖はよく目立ちます。
別に頓着しない黒鋼さんですが、お城に仕えるものとしてはちょっと・・・。
って。黒鋼さんも変わったものです。次元の旅をしている間、律儀な少年少女と正しい生活をしている間に、こんなところにも彼に変化が現れたようです。もしかしてA型だったのかもしれません。私の予想としましては、ファイさんは・・・AB型、・・かなぁ・・・・。
・・・!おっと脱線、失礼いたしました。
とにかく寝癖が気になる黒様。
「あれぇ〜、オレ寝癖たったことないんだけどなぁ〜」
どうやらファイさんには、日本国の枕は合わないようです。
「おい、じっとしてろ」
いつの間にやらファイさんのすぐ後ろに立った黒様が髪を直し始めました。
「ふふっ」
「?なんだ?」
「んーん、そういやサクラちゃんも、いつだったか寝癖たてながら起きてきたことがあったなぁって」
目をつむるくらいにまんべんの笑顔でファイさんが微笑みます。
懐かしい思い出の少女を思い出しているのでしょうか。
「・・・懐かしいな」
寝癖を直してあげてから、少し口元に笑みを浮かべて黒鋼さんも答えます。
「今頃どーしてるんだろーねえ、ふたりは」
そのエンドは・・・
今はまだわからないけれど、この世界のファイさんと黒鋼さんのあのふたりは、幸せに暮らしているようです。