ミーーーンミーーーン
ミーーーンミーーーン
ジィ-------------
暑い。
だから当然
黒鋼の機嫌もよくはない。
日本国の夏の風物詩
セミが命の限り鳴き続ける。
そんな中。
「・・・・・何してんだ?てめえ」
「ん〜?」
大きく眼をくりんと2度ほど瞬かせて、問いかけられたファイはそのままの状態で小首を傾げた。
日本国に来てからというもの、ファイにはきっと全てのものが初めてで珍しいのだろう。
緊迫した中訪れた、前回の旅の時とは、まるで様子が違う。
改めて日本国に来てからというもの、ファイはどんな小さなモノにであれ、とにかく興味を示した。
なるほど、確かにもの珍しいのはよくわかる。
でもそれをやたらと表現したがるのは、やっぱりファイだから、…なのかもしれない。
それもなぜか、全身をめいっぱい使って表現したがる。
たまにふと、黒鋼は中庭で遊ぶファイを見かけることがある。
ある時は蝶々のマネしてひらひらと。またある時はカニのマネして横歩き。
そうしてそんな黒鋼の視線に気付いて目があうと、へにゃへにゃ笑っていっそう機嫌が良くなるのだった。
あの様子からして黒鋼が見ていなくとも、つまり1人の時でもやっているのだろう、…たぶん。
今は、ふとんにすっぽりくるまって、顔だけひょっこり出している。
ふとんの中は余計蒸すだろうに、金髪を額にはり付けながらも、にぱッと黒鋼に笑顔を向けてくる。
「見て見て黒りー、ミノムシのまね―――♪」
・・・・
…この暑いのに。
次はふとんをぐりんと身に巻いてうにょうにょ動き始めた。
にょきり・・
おしりを突き出してはまた伸ばす。
そうしてまた
にょきり。
!!
この動きは
・・・・・まさか。
「イモムシさんだよ〜ぅ♪」
・・・心の底から
楽しそう。
「やめいっっ!暑苦しい!」
とりあえず黒鋼はお布団の端っこをむんずとつかむと、力任せに引っ張った。
暑さも手伝って、ちょっと手荒くなってます。
くるくるくるくる
「ア〜〜レ〜〜ぇ♪」
それでも嬉しそうに、にぱにぱしながら両手を上に、ファイは畳上を勢いよく回転してゆく。
ってファイさん、それってもしかして布団じゃなくて帯で回すやつですか…。
と言いますかファイさん、またどこからそんな知識を…。
黒鋼の眼下には、着物が着崩れてちょっと汗で金糸を乱した、麗しの君。
ひととおり騒ぎ終えて、浅く軽く息が切れていたりします。
ニヤリ
そんなファイの様子を見たとたん、黒い笑みを浮かべる黒様。
何分暑い中、黒様の臨界点もかなり下がっているようでございます。
「ほーお…てめえ、そのシチュエーションの意味、きっちり分かってやってんだろ―なぁ!!」
んん?と、笑顔で黒鋼を見上げるなり、ヒクッとファイの笑顔がひきつる。
・・なんだかコワイ。
目を座らせて、口許だけはなんとか笑いを貼りつける黒鋼を見て、ヒヤリと冷たい汗がファイの背中を伝った。
後ろ手ついて少しずつ後ずさるファイに、ジリジリと詰め寄る黒鋼。
「え、…え?く、ろ様・・?ちょっと〜…?」
「覚悟しろぃッ」
「きゃぅ〜〜!!!」
**自主規制**
(強制終了)
後はご想像に
お任せしますm(__)m
――とある「アツい」夏の日のお話。
「…あぢぃ」
「だね〜…」
暑い中、二人呼吸を切らせながら横に並んで寝っころがる。
ここまで息が切れているのはきっと、黒鋼のせい…。
「黒ろん、オレ…も、ダメ……」
コテリ
「おい?!」
もともと夏知らずのファイである。のぼせて茹でダコくらいに真っ赤に染まった顔で、そのまま気を失ってしまった。
黒鋼が肩をがくがく揺すってみてもピクリともしない。
黒鋼の腕のなか、のぼせて目を回すファイ。
「・・・・・」
―結局。
それから日が落ちるまで、冷しタオルと団扇でファイを介抱する黒たんがいた・・・。