日本国永住 | ナノ

 
 

代わる代わるに金平糖みたいな白や赤や黄色が目配せしあって。


その瞬間を示し合わせて一斉に、幾千幾億の飴が降り注いだのは、その夜のことだった。








「空が降ってくる」



ファイがこんな妙なことを言い出したのは、2、3日前からだった。


旅で出逢った当初からいつもその発言や行動に悩まされていた黒鋼であるが、やはり今回も彼の理解の範疇を越えていた。




ただ、旅の途中のファイの言動について言えば、初めて外界に足を踏み出した人間がその物珍しさに、思わず童心にかえってしまうというそれであったろう。



しかし日本国に連れ帰って来てからのファイは、そのような具合にではなくて、今までとはまた違った様子で変わった言動をとるようになったのだ。





予感めいた不可思議なことを呟く。






「空が、泣くよー…」



悲しげにファイがそう詞をぽつりと紡錘げば、その日の午後から一週間ほど淋しげな雨がしとしと降り続ぐ。

今までに初雪や台風を予言めかしたこともあったが、それだけではない。




天候だけではなくて、地面に手を当てて「背中が痒いのかな・・」などと言いながら辺りの土を緩く掻いていたその晩には、規模はさして大きくはないものだけれど、ちょっとした地震が起こったりするのだった。




果たしてその兆候は、一体何時の頃から何をきっかけとして現れていたのだろうか。



最初は日本国に慣れないファイだったから、客観的に多少謎めいた行動をしていても違和感はなかった。



それがあまりにも自然な成行に沿ってファイが今の状態へと変わってしまった。