19
37/43
血。
鉄のにおい。
ちの、におい…
血糊で濡れる金色。ビロードのカーテンに血飛沫。絨毯に血溜まり。紅い液体。流れる。生温かで。手を濡らす。黒い。滴る。流れる。真っ赤な血の海。
そしてその、中心にいたのは 金髪の−−−−−
薄っすらと蒼は開かれていた。
だが、その横臥した薄い殻からは、力無く四本の肢体が投げ出されている。
頬にはりつく冷たい砂。その媒介の赤は既に乾き切っていたけれど。鼻腔に何時までも纏わりつく、重い臭い。
死臭をはらんだ空気が、弛緩し切ったユゥイの身を包み込む。
その右足首には、鉄製の枷が付けられていた。だが身じろぎ一つしない為、硬質のそれから音が発せられる事は無い。
只、無音に冷たくその動けぬ身を戒める。
自ら息を断つ、
その気力さえも湧かなかった。
罰せられる事が出来るのならば、何処までもどんな物でも、この身が受けられるまでその贖いを受け入れようと。
思考無く開放された意識は其処ばかりへ向かう。
血の臭いが、消えないんだ・・・
失い続けるしかないのなら、
何ももう要らないから
望む事が罪悪と云うのなら、
何も、望まない
奪ったものを、返せる道理は無い。
返そうと足掻く程に喪わせていく。
自分を終わらせない事が、贖罪の一つだった。
だが喩え如何に贖罪に身を焼こうとも
返せるものなど、何一つとして無い