Crimson sky | ナノ



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その日も変わることない餌の様な夕飯が支給される。独り摂食を済ませ、トレイをゆっくりとした所作で返していた金髪の首根っこを捕まえる手があった。

その腕は、空汰の一件以来背後には十分注意していた金髪の間合いを強引に詰め、有無を言わせず引き摺る様に連行した。その腕力に抵抗を試みようとしても全身の筋肉は軋み、まだ此処での作業に慣れていない事を否が応に思い知らされる。

持ち変えることもなくぐいぐいと引っ張られ分厚い作業服のその隙間から微かに透けるような白が覗く。だがそれには全く頓着せず、赤眼の男は前を見て歩いていく。そのまま人気の無い、いい加減の処までくると、痩身を冷たい壁へと打ち付けた。

階段下の薄暗い其処は、篭った様な黴の臭いが一層酷い。

叩きつけられた鋭い痛みに身を竦ませ、鈍く変わっていくその変化に、ただ息を呑んで耐える。唐突な男の行動に金髪は眉を顰めて睨みつけた。


「なに」


問いは呆気なく無視され、男は無言のままに少し肌蹴た囚人服をさらに剥く。


「―――!」


突然の事に身じろぐ身体に、分厚い甲の手が無遠慮に服の中に入り込み、邪魔な布きれを取り除きに掛かる。淡々とその動きに没頭する様を見せ付けていた男が剥いた肌に顔を埋めながら言った。


「俺が…慈善事業なんぞすると思ってんのか?」

響く低音の終わりと同時にその身を飾る小さな突起に熱を這わされ、薄い身体は反射的に小さく筋を強張らせ息を呑むが、直ぐ様息を整え答えを返した。上方から視線を下ろす。


「   …思わないねえ。中途半端は嫌いなんで、しょ …ッ」


皆まで聞かず、無表情のまま行為を続けてくる黒い髪を、白い手が弱弱しく鷲掴んだ。しかし抵抗する気は無いらしい。


その息遣いに。小さく呑まれるその声に。

余りに身に伝わってくるその切羽詰った様子に、黒鋼は僅かに顔を上げてやる。

だが予想に反し、紅いまなこに映ったのは怯えに身を震わせている痩身でも、観念して諦めに身を任せている哀れな捕囚でもない。


ただあったのは。

 ―――この砂漠の地で、数多ある日を跨ぎ見てきた存在どれを取って比したとしても、映し入れたことの無いくらいに

魅惑的な、蒼。




「続き、しようか」


静かに声を震わせると口元を緩め、白い肌に男の薄い唇を自ら招いた。乾燥にざらついた唇を受けとめる。堅くしなやかな筋の張る首筋を手繰り寄せながらも、ユゥイはその逞しい項に小さな赤をゆっくりと這わせていった。

生暖かい熱の心地良い感触によってさらに力の篭る愛撫を受けながらも、金髪は長い脚を黒鋼の身に絡ませ、空箱の積み重ねられていたその場所へと、誘う。

流れるまま押し倒しながら紅い眼は知らず興奮を覚えるが、頭を冷やすべく今一度その色づき始めたものの象を確かめんと薄い胸を辿ってやると、小さな声と共に感じるままに白い喉を見せ付けられ、そいつに齧り付きながら更なる劣情を煽られた。




金糸振り乱れる艶美な姿に

決して甘くはないその行為は益々獰猛で深いものへと化してゆく


幻のようでいてリアルに感じられる全ての感触。

塵埃舞う、世にも不毛で滑稽な箱の中のほんの片隅で

二人だけに小さく開かれた世界は誰の眼にも触れることなく続けられた






溢れ出した二つの熱が、鎮められまたひとたびの終息を見るまで





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