あ、と言葉を発したのはほぼ同時。そのまましばらく睨み合っていたがなまえのチコリータがシルバーのヒノアラシに豪快にタックルしたことでその均衡は崩れた。ヒノアラシはその場にうずくまっていたがしばらくして起き上がると、ササッとシルバーの後ろに隠れた。

「駄目だよ!チコリータ!」

得意げにこちらを見ていたチコリータを抱き上げるとなまえはシルバーにごめんね、と謝ってチコリータをボールに戻した。
その拍子になまえが手に持っていた袋からひとつの箱が落ちた。それを拾い上げようと2人の手が同時に伸びる。必然、それは重なった。

「〜っ!」

シルバーはみるみるうちに赤くなって、すぐにバッと手を離した。

「・・・悪い。」

「ううん。」

大丈夫だよ、といつもの呑気な笑顔を浮かべるなまえを見ていると、自分だけがどぎまぎしていることにシルバーは苛立ちを覚えた。
(なんなんだよ、)

「あ、そうだ!」

突然響いたなまえの声に1人悶々としていたシルバーはビクリと肩を揺らした。

「ハッピーバレンタイン!!」

差し出されたのは銀色の袋。口は金色のリボンで留めてある。

「シルバーには会えるか分からなかったから作るか迷ったんだけど。よかった!」

「・・・。」

「迷惑、だった?」

「べつに。」

素っ気なく答えるとシルバーは少し乱暴になまえの手から袋を取り上げた。先ほどのしゅんとした表情から一転して笑顔に変わったなまえ。そんな彼女の表情、しぐさ、ひとつひとつに振り回されている自身を自覚した。(胸クソ悪ぃ。)




(すきだ、すきだ、だいすきだ。でもだいきらいだ。)


10214
バレンタイン第二弾です。甘くないですね。ちょっと酸っぱいです。
好きな自分を自覚してるけど、認められない。そんなシルバーもえ

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