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愛のカタチ

「はい、これ!」

綺麗にラッピングされた袋を差し出して、満面の笑みを俺に向ける。
一方の俺はいきなりの事についていけず、ただ首を傾げた。

「…何これ?」
「クッキーっす!」
「へぇ……じゃなくて。」

中身を聞いてるんじゃないんだよ俺は。
なんでお前がそんなものをわざわざ俺に渡すのかって話なんだ。
そもそも、なんでクッキーなんだよ。そんな可愛らしい女子みたいなことすんなよ。
つーかその包み方ってもしかして中身手作りだったりする?
まさかだよな?
それはないよな?
あぁ駄目だ、疑問が多くて何から言えば良いのかわからん。

「先輩?どうしました?」
「いや、お前がどうした。つか、なんで俺にクッキー?」

今度は黄瀬が首を傾げる。
と、だんだん不安そうな顔になっていく。

「あの…もしかして甘いもの駄目、でした?」
「え?いや、大丈夫だけど…そうじゃなくて。」
「え、え?あの、今日って先輩の誕生日っす…よね?」

おずおずとこちらを窺う黄瀬のその言葉を、頭の中で反芻する。
今日、誕生日?
…俺の?

「…今日何日だ。」
「7月29日っす。」

あぁそうか。
すっかり忘れてた。
自分でさえ忘れていた誕生日をわざわざこいつが覚えているなんて。
思ってもいなかったことに嬉しさが込み上げ、同時に少し気恥ずかしくなる。
祝ってもらえるんだ。
しかも、こいつに。

差し出されたそれを受け取って少し上にある頭をくしゃりと撫でてやった。

「あー…ありがと?」
「! どういたしましてっす!それ、手作りなんで早めに食べてほしいっす。」

自信作っす!なんてきらきらした目で俺を見ながら言う、そいつがあまりにも嬉しそうな顔をするから。
俺も自然と笑みをこぼしてしまうのだった。



【手作りのクッキーは甘い】

「…馬鹿かあいつ…。」

甘い香りがひろがった部屋で一人、呟いた。
そこには沢山のハート型と一枚のメッセージカード。
徐々に熱くなっていく頬は、確かにあいつのせいだった。



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HAPPY Birthday.
愛がこもってるでしょ?


up:20120729


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