story | ナノ


sweet boy

空を見上げた。
寒い寒い冬の空にため息をつくと、ちらちらと白い吐息がすでに暗くなった空に滲んでいく。
いつものようにチャリを漕ぎながら、うう、寒ぃ、とマフラーに顔を埋める。
もうすぐ12月。
思って、ちらりと後ろを見ると、いつもと変わらず無表情で携帯を見つめる真ちゃんが見えた。
今年のクリスマスは一緒に過ごしたいなぁ、なんて考えてたら、真ちゃんがこちらを見て、ばっちり目が合ってしまった。

「…なんなのだよ高尾。人の顔をじろじろ見て。」
「べっつにー?いつ見ても真ちゃんは美人さんだなーと思って。」
「っうるさいのだよ、馬鹿尾。」

寒さのせいで色づいていた頬がほんのり熱を帯びたような気がした。
分かりやすくて本当に面白い。そう小さく笑って帰路を急ぐ。
染みていくような寒さに身を縮ませて、そういえば真ちゃんは寒がりじゃなかったかな…と思い出した。

「真ちゃん、寒くない?」
「寒い。だからさっさと漕ぐのだよ。」
「へーへー。」

いつも通りだ。
でも、なんか今日は真ちゃんの様子がいつもとはちょっとだけ違う気がするのは俺だけ?
だって、現代っ子みたいに携帯ばっかり弄ってるし。いや、まあ現代っ子なんだけどいつもはあんまし使わないみたいだからさ。
あと、その携帯で何か文章打ちながら時々舌打ちしてクリアボタン押しまくったり?
挙げ句の果てに普段絶対嫌がるのに、自分からお泊まりするって言ってきた。
そう言えば滅多に、というか皆無に近い確率で外さないシュートを今日は三回も外してた。
なんかあったのかな。
でも聞いたってきっと答えてくれないだろうな。
とにかく、真ちゃんの言う通り今はこの寒さから逃げるためにペダルを漕ごう。
と、踏む力に集中したとき、後ろで携帯を閉じる音が聞こえた。
少し遅れて振動を感じる。
え?携帯?
チェックしたいけど早く帰りたいし、そっちが最優先事項だよね。
急いで足を動かす。
明日は筋肉痛になるかもしれない。

「…高尾。」

吃驚して思わず足を止めた。
だって、そんなことあるはずがないんだ。
じゃあ、何でこんなに近くで声が聞こえる?
振り返ると、ああ、やっぱり。
真ちゃんが立ってる。

「何やってんの。危ないっしょ。」
「…高尾。」
「…なぁに?真ちゃん。」

ああ、顔赤いな。
寒いもんな。早く帰ろうぜ。

「…おめでとう。」

まさに天使の微笑み。
それを向けて、真ちゃんは俺にそう言ったのだった。






チャリを止めに行きながら携帯を開くと、新着メールが一件。
差出人は真ちゃん。
その内容を見て、ようやくさっきの「おめでとう」の意味が分かった。


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誕生日おめでとう
大好きなのだよ
(一日遅刻sorry…)


up:20121122


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