story | ナノ


日付、変わっちゃうね

携帯が鳴り響く。
その音に眠い目をこすって携帯の画面を確認した。
午後11時半。明日も朝練あるんだから早く寝たい。
幸い着信は電話ではなくメールのようだから、一回だけ返して寝てしまおう。
そう思ってフォルダを開くと、どうやら送り主は黒子のようだった。
珍しいな、あいつがメールよこすなんて。何か用事でもあるのかな。
思って内容を見て。


Date:11/8 23:28
From:黒子
Sud :無題
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お誕生日おめでとうございます
言うのが遅くなってすみませんでした

これからもよろしくお願いします




すごく簡単な、挨拶みたいな誕生日メールだけど、すごく嬉しかった。
今日、俺は誕生日を迎えて、仲のいいクラスの奴とか部活の同級生とか、先輩にも散々祝われたけど、黒子には一言も言ってもらってなかったから。嬉しい。
気がついたら携帯を耳に当てていた。
コール音が俺の心臓を急かしている。早く、早く。

『…はい』

紛れもない、黒子の声。
あまり話さないから聞きなれないけど、穏やかで響くいい声だと思った。

「もしもし、俺、降旗だけど。」
『はい、分かってます。携帯に表示されてましたから。』
「あ、そっか。そうだよね。」

笑う。
それから、そういえば何で電話したんだろう…と思い直して。
ああそうか、メールのお礼、と話をきり出した。

「メール、ありがとな。」
『ああ、そのことでしたか。わざわざ電話してくれなくても、メールで良かったのに。』
「いや、嬉しかったからさ。」
『……本当は直接言うつもりだったんですが…なんだか、その、今日は近づきづらくて…』

人が、多かったですし。気づいてもらえるか分からなかったので。

それを聞いてときめいた。
柄にもなく花を背負った気がする。少女漫画みたいに。
ここ最近で一番嬉しいかもしれない。
なおも、すみません、と謝る黒子に気にしないようにと言ってから、相手が分からないのをいいことに頬を極限まで綻ばせた。
きっと今、だらしない顔してるんだろうな、と暗くなった窓の外を見ると、思ったとおりのその顔が見えた。
うわあ、こんな顔見せられないなあ。
でもそのくらい嬉しい。

「嬉しかったよ、黒子に祝ってもらえて。」
『そう、ですか…それならよかったです。』

優しい声。
それが心地よくて、急に眠気が襲ってきた。
聞いただけで安心できる声って、なんだか天使みたいだ。

『日付が変わる前に言えてよかったです。』
「うん、俺も。」
『明日渡しそびれたプレゼント持っていきますね。』
「マジで?ありがとー。」

一言一言が俺の鼓膜を震わせて、脳内に波を伝えていく。
目を瞑ると、暗くなった視界だけがあって、さらにその声を鮮明にさせているような気がした。
それでも眠気は容赦なく俺を、確実に、眠りへと誘っていて、ついに欠伸をしてしまった。
目覚まし時計を見るともう日付が変わっていて、もう俺の誕生日ではなくなっていた。
今日も早いし、そろそろ寝なければ、と思ったとき、丁度黒子も同じことを思ったらしくではまた、と電源ボタンに指をかけた。


もうねるねおやすみ、12時2分

じゃあ、今日も一日頑張ろうか、と。
頬を綻ばせたまま布団に潜り込んで目を閉じた。


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HAPPY Birthday.
君に、エールを送りましょう
明日もどうぞよろしく
(一日遅れsorry…)


sab title
へそ」題提供
up:20121109


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