憧れと成の果て
ずっとずっと憧れてた。
だってアンタはすごくキラキラしてて、かっこよくて、俺なんかじゃ敵わなくて。
どうしても追い付きたくて背中を追ったけど、結局届かない。
「っは……!」
響くスキール音とボールの弾む音。
それから…。
「っ…もう一回っす!」
「えー…まだやんのかよ…。」
「当然っす!俺が青峰っちに勝つまでやる!」
「わぁったよ…一回休憩してからな。」
「うー…。」
「さつきー、何か飲みもん買ってきてくれー。」
どっかりと床に座り込んでそう言った彼は、むくれた俺を見て呆れた顔をしている。
ガキっぽいってか?
普段のアンタの方がガキだっての。
キラキラした目ぇしちゃってさ…ホント、
(そういうの、羨まし…。)
1on1に付き合ってもらってる、いつもと変わらない部活後。
自分は何をこんなにもムキになっているのか、それすらも解らないままに、それを繰り返す。
つまらないと思っていたはずの日常がこんなにも充実するなんて、一年の頃は考えもしなかった。
答えの見つからないパズルに悪戦苦闘する自分は、この人にはどんな風に見えているんだろう。
「黄瀬はさぁ、何でそんなに俺に挑んでくるわけ?」
そう聞かれたのは、彼が、俺達が変わってしまう少し前だった。
身体中が痛い。
やっぱり、あの人は越えられなかった。
熱が引かない、気持ちの悪いそこで俺は、あの日あの人に返した言葉を思い出した。
「…もう少しで…届きそう、なんすよ。」
彼は何故か少し寂しそうに笑っているようだった。
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所詮、届かないのさ
up:20120724