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一つで十分だった

白い吐息が空気中に漂っている。
寒さに身を縮めながら俺は空を見上げた。
道理で寒いはずだ、鈍色に染まった雲からは冷気を纏った雨粒が垂れている。
身を震わせてマフラーに顔を埋めると、そこだけがほんわりと熱を帯びた。

(天気予報では、雨、降らないって言ってたのに…。)

昇降口の壁寄りかかってついてないなと頭を掻く。
しかし、寒い。
若干冷たくなってきている指先に息を吐くと、さっきより薄い白が空気中に広がっていった。
今日は珍しく部活がなかった。
だから、と思って暇つぶしに図書室になんて寄ったのがいけなかったんだ。
まぁ、後悔しても遅いわけで。
どうしようか、と頭を悩ませていると、後ろから声をかけられた。

「…高尾?」

ほとんど毎日聞いている声だ、間違えるはずはない。
振り返ると思ったとおり、そこには緑間がいた。

「何をしているのだよ。」
「見て分かんねぇ?」

そう言って視線を鉛色の空に戻すと、あぁ、と小さく息をこぼしたのが聞こえた。
心なしかさっきよりも雨足が強くなっている気がする。
余計に憂鬱な気分になってため息を吐いた、その視界の端に何かが映る。
見ると、それは折りたたみ傘だった。
差し出しているのは言わずもがな、さっき俺に声をかけたやつだ。

「俺はもうひとつ持っている。」

だから、使え。
言った笑顔がいつものものとは違う、優しい笑顔だったことに胸が高鳴る。
俺はそれを有難く受け取って開いた。
少し小さいかもしれないがないよりはマシだろう。

「ありがと。優しいね真ちゃんは。」

言うと、少し眉を顰めて(頬に赤みを差して)緑間が顔を背けた。
よく傘二個も持ってたね、と言うと「一つは以前から置いていた置き傘だ。」と返ってきて、そっか、なんて何の変哲もない返事を返した。
二人で歩く帰り道は、いつも一緒に帰っているのにいつもとは違う。
結局チャリアカーは学校に置いていくことになったし、隣り合わせで歩いているからかもしれない。
隣を歩く緑間を盗み見ると、いつも見慣れた整った横顔が慌てて視線を逸らしたのが分かった。
もしかして、意識してくれてるのかな。
なんて、そのくらい思ってもいいよね、とか考えて俺は緑間との距離をぴったり詰めた。
驚いたような顔をしてこちらを見た顔が赤いのは外気のせいではないよな?

「な、なんなのだよ…。」

小さな声に俺は笑って、そっと折りたたみ傘を閉じたのだった。



相合傘記念日


足音が重なる。
濡れないように、同じ歩幅で。
寒さも半分こ、でしょ?

そんななんでもない時間が、ただただ幸せで仕方がなかった。



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初めて一つの傘の中で歩いた
初めて冬の雨が冷たくなかった


* * * * * * *

高「5000hitありがとな!ちょっと真ちゃん聞いた?俺らアンケートで1位だったんだって!」

緑「…ふん」

高「真ちゃん、照れてるでしょ」(ニヤニヤ

緑「なっ、何を言っているのだよっ!」

高「だって顔真っ赤だし。真ちゃん顔に出るよねー」

緑「っうるさいのだよ!」

高「ま、この結果が嬉しいと思ってくれれば俺はそれでいいけどね。…だってラブラブってことじゃん?」

緑「っ!」

黒「…激しく爆発してほしいですね。」


5000hit突破ありがとうございます!こちらはフリー小説ですので、よろしければお持ちください
ないとは思いますが、持ち帰りの際は自作発言は禁止です
企画アンケート1位の高緑を書かせていただきました。なお、2位のCPはフリーイラストとなります


up:20120919


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