お砂糖は君の愛
水戸部は料理が上手い。
いやマジで、いつ嫁にでてもおかしくないくらい。
そんな水戸部は元々料理好きということも手伝って、よくお菓子やら何やらを作って来ては俺にくれる。
中学時代から続くそれに慣れてしまったせいか、高校に入ってからは自分からもリクエストするようになっていた。
美味しいけどなんだか餌付けされてる気分だ…。
水戸部は甘いものが好きらしい。
一年のとき部活帰りにたまたま見つけて入った喫茶店で嬉々としてケーキを頬張っていた記憶がある。
だからなのか、水戸部が作ったお菓子は売っているものと遜色ない。
そんな水戸部が、毎年、年に一度のこの日だけは必ず作ってくれるものがある。
昼休み。
いつものように一緒に昼飯を食べていたら、水戸部が鞄の中から箱を取り出した。
俺は口の中に残っていたウインナーを飲み込んでその箱を見る。
そうか、今日はあの日か。
毎年のことなのに無性に嬉しくて、俺は満面の笑みで水戸部に視線を移す。
ばちっと目があって、相変わらずシャイな水戸部は恥ずかしそうに目を逸らしたけど尚も俺は笑顔で。
だって、わざわざ作って来てくれるそれは俺の好物。
覚えていてくれて、尚且俺のために持ってきてくれるという事実に浮かれているのだ。
「水戸部、ありがと!」
蓋を開けなくても分かる甘い香りを感じながら言うと、水戸部の口元が少し緩んだ気がした。
sweet birthday.
市販で売っているものより少し甘めのバウムクーヘンを頬張って、あぁ、この甘さの分だけ愛されてるんだなぁ、と自惚れた。
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Happy Birthday.
(年輪の数は俺の想いの大きさを現していたりして)
(…なんてね)
up:20120911