Please kiss me !
真ちゃんは恥ずかしがり屋だ。
それ故にツンデレ。そこが可愛いんだけどね。
ただ、折角二人きりでそういう雰囲気になったっていうのにそっぽを向かれるのは流石にきついんだよ。
ちょっとは甘いこととか、したいでしょ?
だって俺ら付き合ってるんだから。
「…いきなり何を言い出すのだよ、お前は。」
俺の部屋。
テスト勉強だなんて口実をつくって真ちゃんを連れてきた。
実は今日親いないし、密かに期待してたんだけど、結局いつも通りな感じになってしまって。
つい、ぽろっと本音をこぼしてしまいました、と言うわけなのだ。
嫌そうな顔をした真ちゃんに苦笑。
そんな顔しなくてもいいじゃない、相変わらずつれないんだから。
でもよくよく見たら真ちゃんのほっぺが薄らと色づいていて、あぁ、照れてるんだ…なんてちょっとこっちまで照れくさくなる。
真ちゃんはウブだ。
この間ほっぺにチューしたらそれだけで赤くなっていたのを思い出す。
「…やっぱ恋人らしくイチャイチャしねぇ?」
「しない。さっさと勉強するのだよ。」
そう言って教科書に向き直った真ちゃんの耳が赤くなっていた。
分かりやすくて可愛いわ。
その耳に軽く口付けると真ちゃんの肩がびくりと跳ねた。
睨んでも、赤い顔に潤んだ目じゃあまるで効果がない。
…駄目だ、なんか俺この空間堪えられそうにない。
思って真ちゃんに抱きつくと小さな悲鳴が聞こえた。
突然のことでバランスがとれなかったらしく、二人して倒れこむ。
あ、やべぇ押し倒しちゃった。
驚いたように俺を見て、それから真っ赤になった真ちゃんが口をぱくぱくさせて何か言おうとしているけど言葉になってない。
「だって、ちょっとくらい我侭聞いてくれたっていいじゃん。」
誤魔化すように、茶化すように言って笑うけど、思っていた以上に顔が近くにあって。
ここで理性を保てなかったら俺最低な奴なんじゃないの?
真ちゃんは、じっと俺を見つめている。
いつもは俺が見上げているから、下から見られるのはなんだかこそばゆい。
「……何をすればいいのだよ。」
「へっ?」
言ったことが理解できなくて首を傾げた。
真ちゃんは真っ赤な顔のまま睨みを効かせて(やっぱり怖くはないけど)言いにくそうに口をもごもごさせている。
「…だから、恋人らしいこと、とは…その…何をすればいいのだよ……。」
俺は人と付き合ったことなんてないから、分からないのだよ。
だんだんと声が小さくなっていく。
こいつは俺に何回可愛いと思わせれば気が済むんだろうか。
本当に、もう。
こんなことでにやけが止まらない俺は、やっぱりこいつのことが好きなんだ、と改めて自覚した。
「じゃあ……。」
さらさらとした紙を指で梳きながら俺は真ちゃんに顔を近付ける。
ウブな真ちゃんにいきなり難しいことは言えないから、かなり、すっごく譲歩して、俺は笑った。
Please kissa forehead.
(おでこにキスして)
軽いリップ音が聞こえた。
おでこと言えど、真ちゃんからキスしてくれたのは初めてで無性に嬉しくなる。
じゃあ、お返し。
そう言って薄い唇にキスを落とすと、照れたように微笑んだ顔が見えた。
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お前といる時間は初めてばかりだ
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up:20120908