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「#甘甘」のBL小説を読む
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夜が落ちて私たちの時間はやっと始まる。暗闇は私たち暗殺者が行動をするのにうってつけだ。視界を妨げる黒は見られては困るものを隠してくれる。任務によっては昼間の明るいうちにやらなくてはならないこともあるが、大抵は日付が変わる前に終わらせてしまう。暗殺者といえども人間だから、あまりに遅いと眠気で手元が狂うのだ。

「本当に眠いわ…」
「寝るなよ」
「プロシュート!いつ来たの?」
「今だ」

そう、私も人間なのだ。欠伸を噛み殺しながらバーのカウンター席でカクテルを飲んでいると、プロシュートが隣の席に座った。今日は私とプロシュートの二人での任務で、時間になったらこのバーで落ち合うことになっていた。あまりに暇なので早くに来てしまったのだが、プロシュートは予定時刻よりも数十分ほど遅れていた。約束は守る奴なのに珍しい。

「遅刻なんていい度胸ね?」
「別の案件を片付けていたんだ」
「そうなら言ってくれればいいのに」

連絡をくれたらもう少し遅くに家を出たのに。待ちくたびれて眠くなっちゃったわ。残りの酒を一気に煽り、横目でプロシュートを見る。

「で?アレは今どうなの?」
「そろそろ店を出る。お前、酔っ払ってねェよな?」
「ないわよ!」
「ならいい。出るぞ」

カウンター席を立つ。先を歩いていたプロシュートは何も言わずに会計をしてくれていて、本当によく出来た男だと再認識させられた。バーを出てターゲットがいる店の前で張り込みをする。地味で地道で刑事みたいだ。暗殺者という肩書きに相応しく、もっとスマートにやりたいものだ。
暗殺者の男女の組合わせは夜の街によく馴染む。どちらから言うまでもなく私たちは腕を組んでいた。暗殺チームには私以外の女がいないのでこういった役はよくやらされる。別に嫌なわけではないが、尻が軽いみたいで少々複雑な気分だ。というか、プロシュートって暗殺に向かないのではと時々思うことがある。プロシュートは立っているだけでも目立つのだ。実際に女性と擦れ違う度にこそこそと噂されている。身長の高いプロシュートを見上げていると、視線を感じた彼はちらりと私を一瞥した。

「どうした」
「別に。ちょっと優越感に浸ってただけ」
「ハン」

プロシュートは鼻で笑うとスーツの内ポケットからタバコを取り出した。すかさずジッポで火を点けてやる。

「気が利くじゃねェか」
「ふふん。これいいでしょ?前回のターゲットに貢がれちゃった」
「男の前で別の男の話するもんじゃねェ」

ふうっと煙を吐き出すプロシュートは真っ直ぐに店の扉が開くのを見ている。

「今の台詞、グッときたわ」
「ほう」

店の扉が開いてターゲットとその取り巻きが姿を現した。プロシュートはタバコを地面に落とすとそれを踏み潰す。それが合図となり、私たちは帷の中へ一歩踏み込んだ。