×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -


この時期の東さんは引っ張りだこだ。
ボーダー内でも特に顔が広く、教え子も元チームメイトも多い東さんは、とにかくありとあらゆる忘年会に呼ばれている。ボーダー内だけではなく、大学の友人や旧友にも呼ばれてるらしい。おまけに防衛任務も通常通りある。
せめてボーダーの人間の忘年会はまとめてやってくれたらいいのにと思うが、自分もボーダーの人間なので、それが難しいことはわかっている。派閥とまではいかないが、隊、年齢、ポジションによってグループみたいなものがあり、そのグループによって話す内容も違う。なにより、みんな東さんと話したいにだろうから、少人数の方が都合がいいのだろう。
東さんも東さんで、よっぽどのことがない限り誘いを断らないタイプだ。むしろ、そういう交流の場が好きな方だと思う。なので毎年、色んな忘年会に少しずつ顔を出していると言っていた。
私の誕生日は十二月二九日。忘年会シーズンの真っ只中だ。ただでさえ忙しい年末。そんな日に東さんを独占していいのかわからず、私はお昼に少し会えるだけでも嬉しいと伝えていた。しかし東さんは、せっかくの誕生日なんだからと、私のために丸一日予定を開けてくれていたのだった。

「エリス、そろそろ離れたらどうだ? 出掛ける時間がなくなるぞ」

朝から東さんの部屋に訪れていた私は、先程から東さんの膝の上に座って抱き付いている。最初は何も言わずに頭や背中を撫でてくれていた東さんも、一向に動こうとしない私に少し困っているようだ。

「だって、人気者の東さんを今日は独占出来るんですもん。ずっとくっ付いてたい」
「今日はやけに甘えただな」

東さんとお付き合いが始まって、初めての私の誕生日。今日は何でも我が儘を聞いてやるぞ、という言葉を鵜呑みにして、ずいぶん甘やかしてもらっている。

「行きたい店があるんじゃなかったか? そろそろ混み始めるぞ」
「う〜。それはわかってるんですけど」
「けど、なんだ?」
「お外に行ったら誰かと会いそうで。そしたら絶対取られちゃうからぁ。さっきから携帯も鳴ってるし。絶対お誘いの電話ですよー。やだー今日は私だけの東さんでいてください」

東さんの胸に顔を埋めてうりうりと額を押し付けると、東さんは「はっはっは」と声を上げて笑った。

「携帯は非常時もあるから電源を切れなくて悪いが、出るつもりはないぞ。それに外で誰かに会っても今日はエリスを優先する」
「東さん……」
「さあ、時間がないぞ。今日は何をしたいんだ?」

肩をぽんと叩かれて、のそっと東さんの胸から離れる。「ん?」と小首を傾げて私の言葉を待つ東さんの優しい眼差しに、大好きという気持ちが溢れてしまった。

「キスしてほしいです」
「そうきたか」

こくりと頷くと、東さんの手が頬に添えられた。ゆっくりと顔が近付き、唇に柔らかいものが触れる。触れるだけでは物足りなくて、求めるように距離を詰めると、それに答えるように東さんが私の唇を食んだ。意識が蕩けるようなキスに、心が満たされていく。
お出掛けなんてしなくていいから、東さんとずっとこうしていたい。連日の飲み会続きで東さんも疲れているだろうし、二人きりでゆっくりしてもいいのではないだろうか。
私にとって一番の誕生日プレゼントは、東さんと一緒にいることだ。貴重な時間を分けてもらえて、我が儘を嫌な顔せず受け入れてもらえるだけで、嬉しい。ずっと憧れだった東さんとこうしてキスしているのも未だに夢のようだ。

「もう少しこのまま……」

呼吸のタイミングでそう言うと、東さんの手が私の後頭部を支えた。そしてキスをしながらゆっくりと押し倒される。
東さんと二人で溶かしていく誕生日は、まだ始まったばかりだ。


20211229

back