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街の明かりがきらきら光り、静かになる時間帯、私にはちょっとした秘密がある。窓ガラスが小さくノックされたら始まりの合図だ。決まって同じ時間にやって来る秘密は私の毎日の楽しみになっている。今日はどんな話が聞けるんだろう。わくわくしながら部屋の明かりを消し、彼を待った。
暫くすると窓ガラスがノックされた。時計を確認すれば時間ぴったりだ。窓を開けば、そこには金色の髪を真っ直ぐに伸ばしたミザエルが屋根の上に立っていた。

「こんばんはミザエル」
「ああ」

ミザエルはほんのり笑うと窓枠に腰を下ろした。この窓は私のベッドがある場所に設置されているので、私は膝を立てて窓枠に肘をつく。

「いい夜だな」
「そうだね。雲もゆっくり流れてる」

ミザエルがこうして私の窓辺に来るようになったのは少し前のことだ。本当に偶然、寝付けなくて窓を開けたままぼんやりしていたところ、ミザエルが現れた。そして彼が人間ではないことを知らされた。今は人間の姿をしているけど、本当の姿は違うらしい。見たいと言っても拒まれてしまうので、ミザエルの本当の姿を見ることが私の目標だ。

「エリス、そうじろじろと見るな」
「えー?見てないよ」
「嘘を言うな」
「ミザエルがあまりにも素敵だから見惚れてたのかも?」

おどけてそう言えば、ミザエルは眉間にシワを寄せて睨み付けてきた。ミザエルには冗談が通じない。そこをからかうのはとても楽しい。

「でも本当に、ミザエルって素敵だよね。少女漫画に出てきそうっていうか」
「意味がわからん」
「髪も綺麗だし」
「触るな」

指通りのいいさらさらの髪を手に取って遊べば、ミザエルは私の手を払って腕を組んだ。ミザエルの髪は羽みたいなところがあって、実のところそこに一番触ってみたいのだけど、頭部に近付くにつれてガードが固くなっている。

「ケチ」
「ケチだと?」
「そんな怖い顔しないでよ」

ケチという単語が気に触ったのか、ミザエルは怖い顔をして私を見下ろしている。けれど本気で怒っているわけではなさそうだ。

「今日は無意味な話ばかりだ」
「ミザエルがろくに話題を振ってこないからだよ」
「エリスは何故いつも私のせいにするんだ。不愉快だ」
「横暴だ…」

ミザエルはしっかりしていそうに見えて実はワガママだったりする。あと自己中心的なところもある。けれど時々仲間のことについて話してくれる時のミザエルはとてもいい表情をしている気がする。きっと仲間思いなんだろう。
ミザエルがバリアン世界というところから来て、何故人間界に来たのか、理由は教えてくれない。でも私は知らない方がいいのかもしれないと思っている。目的を知ってしまったら、この楽しい時間が終わってしまうような、そんな気がしているのだ。

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