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散々煽った甲斐あって、荒船くんが手を出してきた。わかりやすく交戦的で助かる。
まだブルーベリーの味が消えていない電子タバコを奪われ、律儀にも桶の中に戻した荒船くんは、私の後頭部を引き寄せると深く口付けた。逃げ場のない狭い浴槽に、ゆるゆると沈んでいく。バラが邪魔だ。掻き集めるように私を引き寄せ抱きしめる荒船くんのせいで、お湯が暴れて顔にかかってしまいそうになった。這い上がるために荒船くんの首に腕を回すと、しっかりと意図を理解して私の上半身を起こしてくれる。興奮している状態でもなかなか気が利く男だ。
キスしたまま腕をするすると荒船くんの胸に移動させる。高校生にしては逞しい胸板だ。指先で乳首を擦ったが、あまり反応は得られなかったので、そのまま脇腹へと下ろしていくと、くすぐったかったのか身を捩った。骨盤の骨をなぞり、水着の上から荒船くんのものをさすり上げると、繋がっていた口元から吐息が漏れた。結構可愛い。
しかし荒船くんという男は負けず嫌いでプライドが高いので、このままやられっぱなしではない。荒船くんは私の腹に手を這わせると、そのままなぞるように私の胸に触れた。水着の素材は薄くないのでそれなりに力を入れても問題ないが、やわやわと形を確認するような手つきにもどかしくなる。おまけに、水着はブラジャーのように簡単にずれない。ハイネックの水着なら尚更だ。下から手を入れたらキツくてまともに動かせないのが目に見えている。私は荒船くんとのキスを一度終わらせると、ぐっと力を入れて水着を脱いだ。水分を吸った水着を浴室に投げ捨てる。
解放された胸に視線を奪われている荒船くんは、持ち上げるように私の背中に手を回すと、谷間から鎖骨を通り、首筋、耳をゆっくりと舐め上げた。

「はぁ……」

思わず漏れた声が浴室で反響して、荒船くんの機嫌を良くさせたのがわかった。唇が下っていき、私を見上げている荒船くんは、ちょっと笑いながら私の胸を転がしている。

「マセガキ」
「そのガキに良いようにされてんのは誰だよ」

紛れもない、私だった。胸を弄られて動けず、でも何も出来ないのは癪で、荒船くんの首から背骨のラインに指先を滑らせて、尾てい骨と尻の割れ目の境をくすぐると、荒船くんがビクッと震えた。後ろ手で掴まれて中断させられる。荒船くんは私の乳首を舌先で刺激し、やんわりと歯を立てた。煽れば煽るほど、荒船くんがいやらしくなってくる。たまらない。
最中、何度か荒船くんのものに触れようとしたが、その度に拒まれた。自分が攻めている時は弄られたくないようだ。その負けん気の強さにぞくぞくする。
私を立たせた荒船くんは、胸から下へと舌を這わせながら、腹についていた花びらを手で払い落とした。

「あっ、ん……」

腰にしゃぶりつかれて、とうとう我慢出来ずに声が出た。くすぐったいような、腰から抜けるような快感に震える。高校生の男など、胸と性器にしか興味がないのだろうと鷹を括っていたが、絶妙に違ったアプローチをしてくる。腹に吸い付いた荒船くんは、私の下の水着を膝までぐっと下げると、私を見上げたまま割れ目を指でなぞった。背景がバラ風呂なのがちょっとおもしろい。

「足開け」
「水着そこにあったらムリ」
「ああ……」

納得して、足首までずり下げられる。そこにあっても邪魔なだけなので、片足を上げるとちゃんと脱がせてくれた。
それにしても、鼓動が早い。口の中も渇いてきた。風呂で酒を飲んだせいで酔いが回ってきたのかもしれない。普段ならいくらでも飲めそうなのに。肩で息をしながら手すりに捕まる。

「どうした?」
「ん、……水ほしい」
「ほら」

荒船くんにあげたお茶のペットボトルが渡される。この男、最高だ。ただのガキだったら、気持ちよくて息が上がってると勘違いしていただろう。そうしたら私は絶対のぼせて倒れている。半分くらい飲んでキャップをせずに返すと、荒船くんは中身を飲み干して私の水着と共に浴室に置いた。

「いけるか?」
「大丈夫」

頷くと、荒船くんは何でもないような顔で行為を再開した。ぬるぬるしている私の割れ目を行ったり来たりしていた指が、浅いところまで入ってきて、すぐに抜かれる。かと思えばぐっと押し込まれて、指の腹で前の方を撫ぜられる。

「はっ、んあ……」

指の動きに合わせて湯船が揺れ、水音が響く。荒船くんは私の片足を持ち上げると、浴槽の縁に乗せた。バランスが悪くなるので、壁と手すりに手をかける。大きく開いたそこに顔を近づけた荒船くんは、指の動きをそのままに、充血した突起を舌で舐った。

「あっ、あー、もう……ん……嫌になる」

年下に好き勝手されて、あまつさえイかされそうだなんて。壁についていた手で荒船くんの髪を撫でる。前髪をかき上げてやると、なかなか男前だ。荒船くんは動きを止めず、私の反応を窺っている。

「あ、そこだめ……んっ、あ、あ、……もうイく……ん」

ぞぞぞ、と迫り上がるような快感に身を任せて、絶頂を迎えた。内腿が痙攣している。荒船くんは動きを止めると、立ち上がって私の頭を両手で抱え、濡れた唇で私の舌を掬った。水着越しに荒船くんの熱いものを押し付けられる。

「どうする?」

大きく息をする私に荒船くんが問うた。頭がボーッとして何のことだかわからない。

「何が……?」
「ゴム」
「ああ……。いいよ、でも中には出さないで」

私は浴槽に膝をつき、荒船くんの水着からそそり立つものを露わにした。たらたらと流れているカウパーを舌先で舐めとる。荒船くんの吐息が浴室に広がる。私の声もそうだったに違いない。ちゅ、と数回口付けて、裏側を舐めあげると、荒船くんは目を瞑って少し辛そうな表情をした。全体を濡らすように舐めて、立ち上がる。

「壁に手ついてくれ」

荒船くんはバックを御所望らしい。不安定な足場だから賢明な判断だ。言われた通りにして尻を突き出す。割れ目を熱いものが往復し、ぬるりと侵入してきた。

「ん……」

どちらの声なのかわからない。おそらくどっちもだ。

「荒船くんの不良」
「お前のせいだろ」

名前を呼んでほしくて悪態を吐いたが、お前と呼ばれてしまった。悪い気分ではない。
腰を掴まれて律動が始まる。お湯の音が煩すぎて、荒船くんの呼吸が聞こえないなと思っていたら、背中から覆われるように抱きしめられた。先程から荒船くんとの行為は絶妙に噛み合っている。

「ん、ん……。っあ」

力強く打ち付けられて、耳元では荒船くんの色っぽい吐息がして、淫蕩とはまさにこのことだ。ぎゅう、と回された腕が私の首を絞めているが、それすらも気持ちいいと感じる。あとは荒船くんの顔さえ見れたら完璧だ、と思って振り返ると、キスをねだったと思われたのか、初めてした時のように顎を掴まれた。振り返ってキスをするのはやはり体勢的に苦しい。

「そっち向きたい」

そう言えば素直に中に入っていたものを抜かれて、方向転換させられる。また片足を持ち上げられて、ずるりと荒船くんのものが挿れられる。深くまで打ち付けられて気持ちがいいが、体力がもたない。

「荒船くん……」
「っ、なんだよ」
「足疲れた」
「わがままだな」

はあ、と大袈裟にため息を吐かれた。トリオン体ならともかく、今は生身で足場が悪いのだから仕方がない。荒船くんは私を支えていた手を離すと、浴槽に腰を下ろした。

「名前」

手を広げて、私を跨らせる。私は自分で荒船くんのものを誘導してぐっと押し込んだ。もうすっかり馴染んで、簡単に入ってしまう。前後に腰を揺らそうと思ったが、水の抵抗でうまくいかない。湯船のお湯はだいぶ減ってしまっていて、花びらも溢れまくっている。

「じれったい……」
「え? んあ!」

私の上半身を固定した荒船くんは、下から激しく私を突き上げた。堪らず荒船くんの首に腕を回す。

「あっ、そんなにしたら、んっ、また」
「ん、」
「イく、ーーっ、や、止まって」

宣言して再び果てるが、荒船くんは休むことなく腰を突き上げている。荒船くんもイきそうなのだろうか、でも私ももう考えている余裕がない。振り落とされないようにしがみついていると、荒船くんが「名前」と私の名前を呼んだ。

「イ、きそ?」

こくりと頷く。

「立って」

先に私が立ち上がり、荒船くんも続く。しゃがんで、血管が浮き出ている逞しいそれの先端を咥えて少し吸い、ちゅこちゅこと手でシゴくと、荒船くんが私の頭を抱えた。舌と上顎に液体がぶつかり、口の中にじわりと広がる。とくんとくんと脈打つそれをゆっくりとシゴきながら荒船くんを見上げると、顔をしかめて息を詰まらせていた。かわいい顔をしている。

「っは……はあ……」

荒船くんの呼吸が再開して、大きく息を吐いているのを見計らい、手の動きを止める。舌先で先端のくぼみを撫でて、精液が溢れないように口から引き抜いた。切なげな顔をした荒船くんと目が合う。口の中のものをごくりと飲み込むと、その顔は歪められた。

「飲むなよ」

大抵の男は喜ぶものだが、荒船くんは違ったらしい。それでも私の頭を撫でてくれているから、よくわからない。

「ねえ、一回上がらない? 手がめっちゃふやけてるんだけど」
「そうするか」

片付けもそのままに、浴室を出る。脱衣所が異様に涼しく、立ちくらみしていると、荒船くんが私を支えた。

「あー、助かる」
「さすがにのぼせたか?」
「のぼせるって感覚がよくわからん」

バスタオルで身体を拭いて、下着をつける。荒船くんは下着とTシャツを着ていた。ちゃっかり着替え一式持ってきているので笑ってしまう。身体がとにかく熱くて、タオルを肩からかけてキッチンに移動し、冷蔵庫で冷やしていた水を一気に飲み干した。身体の中に冷たいものが染み渡る。

「荒船くんもいる?」
「おう」

新しい水を渡すと、荒船くんもそれを飲み干した。空のペットボトル二本をキッチンに置いて、ふう、と一息つくと、私の肩にかかっていたバスタオルで、荒船くんが私の髪を拭き始めた。

「え?」
「濡れてるぞ」
「ほんっとムカつくくらい」

カッコいい、とは口に出すのは憚られて、「生意気なガキ」と続ける。ガキと言われることに慣れてきたのか、「だったら大人らしい振る舞いをするんだな」と冷静な声で言われた。
ボーダーにいると麻痺するが、二十代前半なんて全然大人ではない。大学生気分が抜け切れていないし、まだまだ遊びたい。それでも自動的に社会に放り込まれたら、立ち振る舞いだけは上手くなっていかなければならない。私がボーダーで猫を被っているのも、一種の処世術だ。
そういうストレスが溜まって、たまに誰かを無性に傷付けたくなったりもする。あの男にはちょっと悪いことをした気もするが、向こうから与えられるストレスに耐えてきた部分もあったので、二度と会わないことがせめてもの償いか。

「ちょっと横にならない? 疲れた……」
「体力ねえな」
「いいから来い」

荒船くんの腕を引っ張って、寝室に入る。私がさっき脱ぎ散らかしたシャツや下着がそのままになっているのを見て、荒船くんが呆れているのもお構いなしに、ベッドに身を投げた。荒船くんも横になり、頬杖をついて私を見ている。

「なに?」
「いや……」
「なんだよ」
「セックスの時はかわいいなって思って」
「うっわ! 最悪……」

にやにやした顔の荒船くんの肩を押して、私は枕に顔を埋めた。今までのお返しだとばかりに距離を詰められる。

「名前」
「名前呼ぶな!」

くつくつと喉で笑われ、頭を撫でられる。屈辱なような、少しときめくような。

「惚れたか?」

私が言ったセリフをなぞって、荒船くんが冗談を言う。惚れてない、と言おうと思ったが、これでは荒船くんのシナリオ通りだ。つまらない。私は枕から顔を上げると、枕を抱えてにっこりと荒船くんを見た。口元が腕で隠れているところがミソである。

「好き」
「は?」
「ストイックでナルシストでプライド高い、頭のいい男は好き。荒船くん、結構タイプだよ。……知ってた?」

おそらく信じないと思うが、これは本心だ。
ボーダーでの私っぽく、私史上最高に可愛く少し首を傾げて言ってやると、荒船くんの顔が見る見るうちに真っ赤になっていった。荒船くんは何か言い返そうと口を動かしたが、言葉が何も出てこなかったのだろう。悔しそうな顔をして、向こうを向いてしまった。

「高校生からかい甲斐があるわ」
「頼むから黙ってろ……」
「あー、タバコ吸いてえ」

ケラケラ笑いながら荒船くんの真っ赤になった耳を撫でる。また欲情してきてしまった。

「もう一回したいな」

背中にぴったり張り付いて囁くと、しばらくの葛藤があって、舌打ちした荒船くんが私を組み敷いた。両手をベッドに縫い付けられて、荒船くんを見上げる。眉間にシワを寄せて、意地悪く笑った荒船くんがそこにいた。

20210314

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