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「#エロ」のBL小説を読む
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※「寒い日に生まれた」と同軸の設定。
書きたいところだけ書いたので脳内補完が必要です。
ツイッターで公開している #はんざきくんにQOLを上げてもらう暮らし を読むとわかりやすいかもです。

名前ちゃんはオレに甘えていると思う。携帯で調べればすぐにわかるようなことをいちいち訊いてきたり、小学生が落ち込むような理由で慰めてもらいに来たり。
オレもオレで、放っておけなくてドジの後始末をしたり、なんだかんだで面倒を見てしまう。こういうのを庇護欲と言うらしい。成人している人間に対して高校生のオレが庇護欲とか言っているのはどうかと思うけど、実際におれに泣き付いているのは向こうだ。それに、無自覚に甘え上手なんだと思う。
名前ちゃんに対しての感情は庇護欲の一種。ずっとそう思いながら接していたはずだった。今のままでも十分楽しくやっていけると思っていた。しかしさっきの名前ちゃんの発言で、オレのそんな思いは簡単に崩れ去った。
オレは常々、名前ちゃんは今までどうやって生きてきたのだろうと思っていた。なんとなくだが、名前ちゃんはやろうと思えば大抵のことは出来るけど、オレに甘えているせいで余計に出来なくなってきているのではないかと思っていたのだ。だがさっきの一言で、名前ちゃんは堕落したわけじゃなく、元々こういう人間で、常に助けてくれる誰かが側にいただけなんじゃないだろうかと推測できてしまった。
名前ちゃんはおそらく、最近まで彼氏がいたに違いない。いつまで付き合っていたのかわからないが、下手したらオレとの同居開始にギリギリ被っていた可能性もある。
大人だから元カレの一人や二人いるだろう。でも名前ちゃんは、オレの前でそういう話を一切しなかった。オレもオレで、そんなことに気付きもしないで生活を共にしていた。普通に考えて、彼氏がいる人間が高校生男子と同居するわけないからだ。
喉がやけに渇く。怒りだったり落胆だったり悲しみの感情を、全て一緒くたにして「ダル……」という言葉で片付ける。そして自分が名前ちゃんに対して向けていた感情の正体に、再び「ダルいなー……」と呟くと、名前ちゃんは「義人くん?」と首を傾げた。
生活能力がなくて、すぐにべそべそして、同級生の女子より幼い印象の名前ちゃんも、やることやってんだと思うと、何だか腹が立つ。
何も考えていないのか、オレにくっついて来たり、たまに布団に潜り込んでくるのを許していたのは、名前ちゃんに幼さを感じていたからなのに、実際に幼いと思われていたのはオレの方だった。

「義人くんどうしたの? 具合悪い?」

ソファーの前で突っ立っていると、名前ちゃんが立ち上がった。帽子の上からオレの頭を撫でて、顔を覗こうとする名前ちゃんに、カッと顔が熱くなり、とうとう我慢が出来なくなった。
意識させたい。オレも男なんだってこと。名前ちゃんのことを「姉ちゃんみたいな存在」ではなく、異性だと思っていることを。
ただでさえ近かった顔に、吸い寄せられるように近付く。もう唇がくっ付くと思った瞬間、「ちょっ」と名前ちゃんが仰け反って、口を手で塞がれた。

「よっ、義人くん!? なっ、なに、えっ?」

顔を真っ赤にして困惑の表情でオレを見る名前ちゃんに、正直ムラムラしている。名前ちゃんはいつもの困り眉をさらに困らせたようにしてオレを嗜めようとした。大人って、本当に都合がいい時だけ大人ぶるようだ。

「いたずらしようとしたの? だ、だめだよ。そういうのは好きな女の子としないと……」

あんただよ、とは口が塞がれていたから言えなかった。でもわからせてやりたくて、名前ちゃんの手首を掴んで舌を出す。そのまま手汗で少ししょっぱい中指と薬指の間をべろりと舐めてやると、名前ちゃんは「ひゃあ!?」と驚いてソファーに尻餅をついた。
名前ちゃんを押し倒して両手首を押さえ付ける。そして勢いのまま唇を押し付けた。

「んっ、んん!」

ぎゅっと唇を噤んでいるせいで、唇の柔らかさだとかそういうものはわからない。でもキスした。初めてのキスだった。
呼吸が苦しくなって、一度唇を離して息を吸う。同じタイミングで名前ちゃんも口を開けたので、すぐに舌をねじ込んだ。柔らかくて、濡れている名前ちゃんの口の中を夢中で荒らしていく。

「んふ、んぅ……」

いつも寝言で聞いているような声なのに、キスしながら聞くとあまりのエロさに頭がくらくらする。バカみたいに興奮して、勃起したちんこを名前ちゃんに擦り付けた。
おっぱいに触りたい。名前ちゃんは抵抗してないし、多分大丈夫だ。そう思ってキスしながら両胸を鷲掴みする。名前ちゃんは風呂上りは基本ノーブラだ。指が沈み込むくらい柔らかいそれは、服の上からなのに手に吸い付くようだった。あまりにも気持ち良くてずっと触っていたいくらいだったが、生で見てみたくなって、キスをやめて顔を上げた。その時だった。

「義人くんだめ!」

くりくりした瞳から大粒の涙をボロボロ零す名前ちゃんに、ひゅっと血の気が引く。慌てて身を起こすと、名前ちゃんは腕で胸を隠すようにしながら起き上がった。

「ごっ、ごめ……」
「そっ、そういうのは大人になってからね!」

そう言い残すと、名前ちゃんはソファーの角に足をぶつけながらリビングを出て行った。廊下でずっこける音がした後、ばたんとドアが閉まる音がして、家の中が静まり返る。
めちゃくちゃ泣いてたけど、結局怒られたのかすら曖昧だ。というか。

「大人になったらいいんだ……」

いや、それも咄嗟に出た言葉で本心じゃないかもしれない。本心じゃないなら、出来もしないことを言わないでほしい。こっちはガキなりに本気なのに。
ズキズキと痛む胸と股間に、オレは「あーあ」と呟いて、帽子のツバをぐるりと前に回した。

20220325

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