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秀次くんは、早く大人になりたがっているみたいだ。
秀次くんは大学に行かずに、高校を卒業したらボーダーで働くつもりらしい。私は秀次くんとのキャンパスライフをなんとなく思い描いていたが、今みたいな学生同士の付き合いは、あと一年と少ししかないようだ。
このことに反対なんてするつもりはない。けれど、ただでさえボーダー隊員として様々な責任を負っているからこそ、モラトリアムの中にいた方が気が休まるのではないかと思ったのだ。
そう思っていることを伝えると秀次くんは、「十分休まっている」と呟いて私の肩に擦り寄って来た。普段人に甘えたりしない秀次くんが、私にだけこういう一面を見せてくれることが嬉しい。
秀次くんは少し前まで何かに悩んでいるようだった。ボーダーについての悩みは一般人には話せないため、私は見守ることしか出来なかったが、だからこそ私は秀次くんの側にいたいし、支えてあげたいと感じた。それが秀次くんの彼女としての役目だと思ったのだ。

秀次くんの部屋には、趣味を匂わせるようなものがほとんどない。学校とボーダーと、私生活に必要な最低限のものだけが置かれている。あとは小さい頃から所持しているものがちょこちょこあるくらいだ。そんな遊びのない部屋で、私たちはいつも交流している。
秀次くんは私の肩に手を置くと、「いいか?」と訊ねた。その質問が何を意図しているのかは、真っ赤な顔を見れば鈍感な私でもすぐにわかった。
正直に言うと、そういう行為は私にはまだ早いのではないかと思っていた。中には中学生で初体験を済ませている子もいるらしいが、私はそういう知識には疎く、最低限のことしかわからない。しかし私は「秀次くんなら、いいよ」と答えた。もし何かあったとしても、秀次くんなら絶対に私を大切にしてくれる。私は秀次くんを信頼しているし、想定よりも早くその時が来てしまっただけで、嫌なわけではない。それに私は秀次くんのことが大好きだから、私の全部をあげてもいいと思ったのだ。

「ん……」

秀次くんの部屋のベッドは、彼が小さい頃から使っているものだという。多分ご両親が選んだのだろう、角が丸くなっている木製のフレームが、今の秀次くんにはあまり似つかわしくない。しかしそういう部分も含めて彼が過ごして来た部屋だ。
そのベッドに腰掛けながら、秀次くんと何度目かわからないキスをする。ふわりとした唇が湿り気を帯びてきて、微かな吐息が掛かって温かい。唇が離れて、はあ、と息を吐くと、秀次くんと目が合った。恥ずかしくて目を伏せると、キスの合図だと思ったのか、再び唇が重なった。
キスなんていつもしているのに、今日は一段とドキドキする。秀次くんもきっと緊張しているけど、それ以上に緊張している私を気遣っているのか、表面上は普段と変わらないように見えた。

「ふ、んぅ……」

わずかに開いていた唇の隙間から、秀次くんの舌が控え目に入ってくる。こういうキスはあまりしたことがないので、まだ慣れない。
秀次くんのため息のようなものが私の口の中から聞こえるような気がして、普段のキスよりも深く繋がっていることを実感する。私も舌を伸ばすと、秀次くんの温かく濡れた舌先に触れた。薄いのか、厚いのかわからない舌が拙く絡まって、唾液が混じる。舌の動きで唾液が口の縁に溜まり、それが秀次くんの唇で引き伸ばされて、ほんの少し離れるだけでちゅ、ちゅ、とリップ音が鳴る。
頭がぼんやりしてきてしまい、秀次くんの胸に手をついて寄り掛かると、優しく抱き締めてくれた。好き、と心の中で囁きながら唇を求める。
こうしていると、秀次くんが本当に私のことを好いているのがわかる。普段は顔に出さないし、友達にからかわれるのが嫌なのか外では素っ気ない。でも二人きりになると猫のように寄って来て甘えたり、誰よりも私に優しくしてくれる。
秀次くんの手が私の肩を撫でた。そのままセーラー服のフロント布のボタンを外されて、スカーフに手が掛かったところで、秀次くんの動きが止まった。
あ、と思って、秀次くんの手をそっと握る。秀次くんは肩で息をしながら、気まずそうな表情をした。

「脱ぐから、秀次くんも……」
「ああ」

私の言葉の通りに、秀次くんが学ランのボタンを一つずつ外す。私はサイドにあるファスナーを開き、袖を抜いてセーラー服を脱いだ。
キャミソールにスカート姿の私と、ワイシャツまで脱いで上半身裸の秀次くんは無言で見つめ合って、そのまま自然な流れでベッドに横たわった。
私の上に覆いかぶさった秀次くんの切れ長の目に、私の顔が小さく映っている。反射的に目を逸らすと、秀次くんの手が私の髪を撫でた。

「気が変わったか?」
「ううん、恥ずかしいだけ。触っていいよ」

こくりと生唾を飲んだ音が聞こえて、秀次くんの手のひらがそっと私の胸を包んだ。キャミソール越しに優しく動く指の感触がする。秀次くんに胸を触られることのは初めてで緊張してしまう。手のひら越しに私の激しい鼓動が伝わっていると思うと、さらに恥ずかしい。

「痛くないか?」
「うん」
「その、直接……」
「いいよ」

躊躇いがちにキャミソールを捲られる。ブラジャーのホックを外すため背中に腕を回されたことで、私と秀次くんのお腹がくっつく。秀次くんの素肌が温かくて、ぞく、と肌が粟立つ。キャミソールとブラジャーを脱いで現れた私の胸の頂点は、つんと上を向いていた。腕で胸を隠すと、秀次くんがふっと笑った。

「笑わないで」
「笑ってない」
「うそ、笑ってたよ。初めて見せるから緊張するの」
「そうだな」

どことなく嬉しそうな秀次くんが、私の腕を持ち上げて、丁寧に身体の横に置く。露わになった胸に秀次くんの視線を感じて、また肌が粟立ってしまった。
まだ直接触られたわけでもないのに、乳首が立っているなんて、変な子だと思われたかもしれない。
居た堪れず顔を背けると、秀次くんの指先が私の胸に触れた。

「つめたっ」
「っ、悪い」
「平気、びっくりしただけ」

手が冷たいというだけで、触られていることがよりリアルに感じる。

「んぅ……」

やわやわと胸を揉まれて、体温が馴染んでくる。なんだか変な気分になってきてしまった。これまでえっちなこととは無縁だったから、これが興奮している状態なのかわからないが、足の先までじんじんと熱い。
大好きな秀次くんに見せたことのない自分を見せて、私も秀次くんの知らない一面をこうして見ている。秀次くんの家族だって、今の彼のことは知らない。特別な行為の、さらに特別な日を、私たちは過ごしている。

「あっ……」

秀次くんの前髪がさらさらと流れたと思ったら、胸に温かくて一段と柔らかい感触がした。先程までキスしていた唇が、私の胸に当てられている。押し付けられたまま移動され、啄むようにキスをされる。

「秀次くん……」

秀次くんの舌が、控え目に私の乳首をさりさりと舐めた。その姿を無意識に見つめていると、秀次くんは目線だけを上げて私の顔を見た。目が合ったまま、舌を動かされる。はあはあと息をする私を見て、秀次くんが微かに微笑む。きゅん、と何かが収縮した。

「かわいい」
「っ、いつもそんなこと言わないのに」
「いつも思っている」
「あぅ……」

秀次くんは照れ屋なので、私に「かわいい」と言う時は、一生の恥だ、とでも言わんばかりの表情をする。それなのに、こんなに恥ずかしげもなく言ってくれるなんて。

「あ……」

舌だけでなく、指のはらでも乳首の表面を撫でられる。気持ち良いとかそういうものはまだよくわからないが、気を抜くと変な声が出てしまうので、必死に堪えていた。

「下、触っていいか?」

私の胸から離れた秀次くんが、ぎりぎり聞こえるくらいの声量で言った。下とはつまり、そういうことだろう。
途端に襲ってきた現実感に怖気付きつつ、頷いてスカートのファスナーを下ろす。スカートを脱がせてもらい、パンツだけになってしまった私を、秀次くんが見下ろしている。
私の腰元に座った秀次くんは、私の足を開くと、これまで以上に繊細な手付きで下着のリボンに触れた。そして指先を少し押し当てて、線を引くように割れ目をなぞった。経験したことのない感触にびくりと震えると、「大丈夫か?」と心配そうな声で言われてしまった。ぎゅうと目を瞑りながら頷くと、指が移動して、かさついた手のひらが私の内腿を撫でた。

「はあ、はあ……」

ぞわぞわとして、くすぐったいともまた違う。気持ち良いとは、このことなのだろうか。知らない感覚で頭がいっぱいだ。
足の付け根を撫でられて、思わず声が出てしまった。ぱっと口を手で抑える。すると、秀次くんはくすぐるように指をすぼめたり、開いたりして、私の反応を見ていた。

「や、それ」
「…………」
「はぁ、あっ」

足を閉じて動きを止める。見ると、口を噤んで照れたような表情の秀次くんがいた。

「そんな目で見ないで。恥ずかしい」
「すまない……」

秀次くんは私の横に寝転ぶと、ちゅ、と私の頬に口付けた。秀次くんの首に腕を回してキスをしていると、再び彼の手が下着に触れた。あ、と思ったのも束の間、ゆっくりと下着の中に手が入って来て、中指が割れ目の中心を滑っていく。

「んう、ん、ふっ」

触られている部分から聞こえる水音を掻き消すように唇を動かすと、指が一本入って来た。すんなり入ってしまうくらい濡れているらしい。数回慣らすように動かした後、ゆっくり指が引き抜かれる。
秀次くんは身体を起こすと、両手で私の下着を下ろした。そして私はとうとう秀次くんに全てをさらけ出してしまった。
どこを見られているのか、視線を追えば簡単にわかってしまう。秀次くんの息も一層荒くなって、スラックス越しに彼のものが膨らんでいるのも一目瞭然だった。
こうして身体を見せ合うことも、そのうち当たり前になってしまうのだろうか。服を脱いで触られるだけで壊れてしまいそうなくらいドキドキして、身体が燃えるように熱くなるのは最初のうちだけで、大人になれば手を繋ぐくらい当たり前のことになっているのだろうか。
大人になるって、何だろう。

「痛かったら言え」
「うん」

掻き分けるように指が入ってくる。さっきとは質量が全然違くて、急に不安になってしまった。

「それ、指何本……?」
「二本だ」
「そっ、か……」
「大丈夫か?」
「多分……」

二本できついと感じるのに、これ以上大きいものが本当に入るのだろうか。痛かったら嫌だけど、それ以上に秀次くんと一つになってみたい気持ちがあるので、行為を再開してもらう。
私の中に押し込まれていた指がそっと動き始める。じっくりと抜き差しされるのが、より羞恥心を煽った。くぽ、くぽと音がするのは、私から溢れたもののせいだろう。恥ずかしくて変になってしまいそうだ。
しばらくその動きを繰り返されて、水音がどんどん卑猥になっていく。これ以上そんな音を聞かれたくなくて、秀次くんの手を止める。

「秀次くん……、あ……」
「どうした」
「も、挿れてほしい……」
「……わかった」

ちゅく、と音を立てて指が私の中から出て行く。秀次くんは「ちょっと待っててくれ」と言うと、ベッドから下りて勉強机の引き出しの中から箱を取り出した。実物は見たことないが、きっとあれがコンドームだ。箱はすでに開封されているようだった。秀次くんは中から連なったコンドームを取り出すと、一枚千切って残りを箱に戻す。
秀次くんはベッドに腰掛けて、ベルトを外し始めた。こちらからは見えないが、準備をしているようだ。

「秀次くん」
「なんだ?」
「……見せて?」
「えっ」
「私も、秀次くんの見たい」

擦り寄ると、動揺したのか前を隠されてしまった。じっと視線を送ると、渋々といった様子で隠すのをやめた。ずり下げられた下着の中から、秀次くんのものがそそり立っている。初めて見た異性のそれに釘付けになっていると、秀次くんがふいっと顔を背けた。

「あまりじろじろ見るな」
「だって」
「だってじゃない。っ!?」

熱を持つそれに手を添えると、秀次くんの肩がびくりと震えた。先端に溜まっていた雫のようなものを親指の腹でくるくると伸ばすと、秀次くんの色白な頬が真っ赤に染まった。ずっと私だけ恥ずかしかった分のお返しだ。

「俺はいい、っ、ん、あ……っ」

軽く握って指ですりすりと撫でると、秀次くんの吐息が甘くなった。こうされると本当に気持ち良いみたいだ。もっとしてあげようとしたところで、やんわりと手を握られる。

「嫌だった?」
「違う、その……」
「秀次くん?」
「もう挿れたい」

消え入りそうな声が、確かに聞こえた。すすす、と離れると、秀次くんが気まずそうにコンドームを付け始める。どんな風に付けるのか気になったが、見られたくなさそうなのでやめておいた。
準備が出来たのか、秀次くんがベッドに上がってくる。ズボンは履いたままなんだ、と心の中で思いながら、秀次くんに促されて寝転んだ。

「好きだ……」
「私も、好きだよ」

キスをしながら穴の位置を確かめるように撫でられて、秀次くんのものの先端が押し付けられる。

「力を抜け」
「う、うん……」

言う通りにしたいのはやまやまだったが、緊張でどうしても身体が強張ってしまう。いくら秀次くんが相手でも、怖いものは怖いのだ。だからこそ、他の人とだなんて考えられない。初めても、これからも秀次くんだけがいい。
ぐっと押し込められて、太いものが中に入ってくるのがわかった。私と秀次くんはついに繋がったようだ。

「全部入った……?」
「まだ半分だ。無理か?」
「……へいき」
「わかった」

正直痛くないと言ったら嘘になる。けれどここまできたら最後まで頑張りたい。入り口が広がっていく痛みはあるが、中はあまり感覚はないようで、何がどこまで入っているのか検討もつかない。止まっているのか、押し進めているのかすらわからなかった。

「名前」

秀次くんの手が私の顔の横に移動する。切なげな表情の秀次くんが私の上に重なって、掻き抱くように身体を抱き締めた。私も秀次くんの背中に腕を回す。秀次くんの身体は汗でしっとりと濡れていて、耳元に掛かる吐息は聞いたことがないくらい荒い。こんな状態にも関わらず私のことを気遣ってくれていたのだ。

「秀次くん、好き、大好き」

秀次くんの頭を抱き締めてキスをする。秀次くんは余裕がないのか、気持ちが高まっているのか、私の唇や舌を貪るように唇を重ねた。
秀次くんがゆっくりと腰を動かす。瞳がどんどん細まって、気持ち良さそうな表情になっていく。初めて見る表情だった。
もしかしたら秀次くんはいつも、この部屋で、このベッドでそういうことを一人でしていたのかな。その時に私のことを想ってくれていたらいいな。

「名前っ」
「んっ、秀次くん」
「もう……」
「うんっ」
「あっ、っは、……っ、はあ……」

余裕のない激しいキスをされながら、きつく抱かれる。秀次くんの身体がびく、と小さく震えて、聞いたこともない掠れた呻き声のようなものを上げ、身体の動きを止めた。その姿はあまりにも無防備で、色っぽい。あの秀次くんがこんな風になるなんて。
余韻が抜けたのか、秀次くんは手をついて上体を起こすと、はぁ、と息を整えながら私を見下ろした。

「悪い、俺だけ……」
「ううん、秀次くんと出来て嬉しかった」

首に抱き付くと、すりっと首元に擦り寄られた。秀次くんは甘える時はいつもこうして首元に寄って来るのだ。大人しい姿がなんだか可愛くて愛しい。離れるのが名残惜しくて、まだしばらくこのままでいたいなと思いながら、秀次くんの頭をよしよしと撫でる。
今日は私の知らない秀次くんの色んな一面を見た。私も自分で気が付いていないだけで、そう思われているのかもしれない。
秀次くんは自分だけ気持ち良くなったことに対して謝ったのだろうが、それは違う。私はまだ身体のことはよくわからないが、気持ちがとても満たされて、これまで以上に秀次くんのことが好きだと感じた。だから私も気持ち良かったのだ。
私は次に秀次くんの部屋に来たら、きっと今日のことを思い出すだろう。秀次くんはもしかしたら、今日寝る前に、このベッドに横たわっていた私の姿を思い出してくれるかもしれない。そうだったらいいなと思いながら、秀次くんのこめかみに口付けた。

20211121

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