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改札口を出ると、案内板の前に立っていた鋼くんが私に気が付いて手を挙げてくれた。
久しぶりに見た鋼くんは、記憶よりも筋肉が付いているようで、服の上からでもがっしりしているのがわかる。しかしその表情や仕草は以前と何ら変わりない。ほっとして駆け寄る。

「お待たせ! 久しぶりだね」
「名前、来てくれてありがとう。会えて嬉しいよ」

鋼くんはそう言うと、目を細めてはにかんだ。その表情に胸が温かくなる。
私と鋼くんは中学生の頃から付き合っている。鋼くんがボーダーにスカウトされ、引っ越してしまってからは遠距離になってしまったが、彼のことが好きだという想いは何ら揺るぎない。もちろん寂しいと思うことはあるが、連絡はマメにくれるし、時間がある時は電話もしてくれる。
ボーダーの機密事項の関係上、話せないことも多々あると言うが、同じ支部の人達の話や友達の話を聞いていると、こちらでの生活が充実しているのがわかって嬉しくなる。一時期、鋼くんの生まれ持った性質のせいで友人が離れてしまったことがあったため、人間関係を少し心配していたけど、杞憂に終わったみたいだった。

「とりあえずチェックインして荷物置きに行くか」
「うん。いつもホテル取ってくれてありがとうね」
「いや、名前が来てくれるのが嬉しくて」

そう言うと、鋼くんは私が持っていたキャリーケースをさり気なく持って歩き出した。
ボーダーに入った当初、鋼くんは私が三門市を訪れることに反対していた。いつ何が起こるかわからない街に来させられないとのことだったが、鋼くんがB級隊員というのになってからは気持ちが変わったのか、遊びに行きたいと言うと素直に喜んでくれるようになった。こっちに来てくれるからという理由で宿泊費や食事代を出してもらっているのはとても罪悪感があるが、本人曰く「そのために稼いでいる」らしい。防衛任務の関係上、中々地元に帰って来られないというのもあり、最近はお言葉に甘えてしまっている。
ホテルに泊まるのももう慣れたものだ。いつも同じホテルだから、チェックインもスムーズに終わる。私がこちらに来ると、鋼くんも同じ部屋に泊まってくれるので、本当に一日中一緒にいられるのが幸せだ。最初は遠慮してツインベッドの部屋を取っていたが、結局同じベッドでくっついて寝てしまうため、それ以来はセミダブルの部屋を取ってくれている。
部屋に入って荷物を置くと、鋼くんがそわそわし始めた。意図がすぐにわかって、思わず笑ってしまう。

「鋼くん!」

名前を呼ぶと、鋼くんは嬉しそうな顔をして手を広げた。飛び付くように鋼くんの腕の中にすっぽりと収まる。ぎゅう、と抱き締められて、心が満たされていくのを感じた。

「鋼くん、筋肉ついた?」
「最近鍛えてるよ」
「やっぱり! 胸板厚くなってるもん。すぐわかったよ」
「名前は変わらないな。いい匂いがする」
「わわっ」

耳元に鼻先をくっつけられて、くすぐったくて身を捩ったが、鋼くんの太い腕から逃れることが出来ない。お互いにふふふ、と笑い合う。

「名前」

上を向くと、額に口付けられた。それから頬に落ちて来て、自ずと唇が重なり合う。まるで初めてキスしたかのように鼓動が早くなって、体温が上がっていく。
それなりに長く付き合っていて、キスもそれ以上も何度もしているけど、未だにドキドキが止まらない。友達には遠距離で気持ちが冷めたりしないのかとよく聞かれるけど、再会する度に改めて恋に落ちた気分になるのに、どうやったら冷めてしまうのか、逆に教えてほしいくらいだ。
一度離れた唇がまた繋がる。普段ならこの辺りで落ち着くはずなので、おや、と思っていると、鋼くんの舌がゆっくりと私の唇をなぞった。一層心臓が跳ねる。動揺を悟られたのか、唇が離れた。紅潮して呼吸が荒くなった鋼くんは、私の頭と腰を抱き留めると、小さな声で「悪い……」と謝った。

「鋼くん?」
「出会い頭なのはわかってるが、離れ難い」

離れ難いとは、つまりそういう意味なのだろう。鋼くんにしては珍しい出来事で驚いたが、嫌な気持ちなど全くない。むしろ、時間が早まっただけで、私だって期待していた。鋼くんの言う通り、まだ会ったばかりでちゃんと話もしていないけど、そういう行為だってコミュニケーションの一部なのだから、悪いなんてことはないはずだ。

「……いいよ」

鋼くんの首に腕を回して口付ける。すると、突然身体が床から浮いた。鋼くんはにこりと笑いながら私を横抱きして、ベッドにそっと下ろした。覆いかぶさって来た鋼くんに、先程とは比べられない程に深く口付けられ、息が上がる。ブラウスのボタンも手際良く外されて、ブラジャーのホックもいつのまにか外されていた。
ちゅっ、とリップ音と共に唇が離れる。身を起こした鋼くんは、熱に浮かされたような表情をしている。鋼くんは両手を自分の首の後ろにまわして、襟元を引っ張るようにして素早くTシャツを脱いだ。女の子とは違うシャツの脱ぎ方がやけに色っぽくて、ぞくりとする。真っ黒な瞳がじっと私を捉えているのを見て、今日は普段よりも覚悟しなければならないと悟った。

「あっ、あ、鋼くん! も、むりっ、んんっ!」

鋼くんの舌と指で、何回イかされてしまったのかわからない。久しぶりだったこともあり、敏感になっている部分を休む間も無く攻められてしまって、想像するのが阻まれるくらい凄いことになってしまっていた。こんなに乱れてしまうのは初めてで、恥ずかしくて涙目になってしまう。絶え間なく与えられる快感に、心臓がばくばくとうるさい。
鋼くんは顔を上げると、濡れた口元をぐいと腕で拭った。一見冷静にも見える表情だが、息の荒さから鋼くんもかなり興奮しているのが伝わって来る。鋼くんはベッドから下りると、リュックから避妊具が入った箱を持って戻ってきた。

「ま、待って」
「名前……?」

連なっている避妊具の袋を千切っている手を止めると、急に不安そうな顔をした。鋼くんは見かけによらずネガティブなので、すぐに否定しなくてはならない。

「その、さっきから私ばっかりだから、私も鋼くんの触りたい」
「……いいのか?」
「うん」
「ありがとう」

避妊具を枕元に置いて、鋼くんがベッドボードに寄りかかるように座る。ベルトを外すのに手間取っていると、代わりに外してくれた。ボタンとチャックを外して、ジーンズを脱がせる。
鋼くんのものは下着の上からでもわかるくらいに硬くなっていた。下着越しにそれを摩ると、溜息にも似た吐息を吐いて、鋼くんの喉が鳴る。
まじまじと見ているのが恥ずかしくて、鋼くんにキスをする。下着の中に手を入れ、熱くなったそれを優しく手で包み上下に動かすと、鋼くんの舌遣いが荒くなった。押し倒されそうな勢いでキスをされるので、なんとか倒れないようにするのが精一杯だ。先端に親指の腹を滑らせると、ぬるぬるした液体が溢れていた。それを広げるようにして撫でると、鋼くんがぴくりと反応して、唇が離れた。息を整えながら鋼くんのものに顔を近づける。

「ぁ……」

ゆっくりと舐め上げると、鋼くんから小さな嬌声が溢れた。全体を丁寧に舐めて、筋をなぞる。私は鋼くんのような特殊な能力はないので、上手く出来ているかはわからない。でも私が触れたいと言うと喜んでくれるので、きっと鋼くんはこうされるのが好きだ。
両手で根本を握り込んだまま、全体を咥え込む。そのまま上下に動かそうとしたが、髪が邪魔で上手く出来ない。すると、それを見た鋼くんは、私の髪を耳に掛けてくれた。目だけで見上げると、気持ち良さそうな顔をしてくれている。行為中、言葉はあまりないが結構表情豊かなので、こちらまで嬉しくなってしまう。
それにしても、今日の鋼くんは本当にどうしたんだろう。前戯であんなにめちゃくちゃにされてしまうことなんて、今までになかった。久しぶりに会えたからなのだろうか。それとも、鋼くんに何かあったのだろうか。わからないけど、求められて悪い気はしない。むしろ、しばらく見ない間に鋼くんの色気がすごいことになっていて、目に悪い。どんどん逞しくなって、男の子から大人の男性になっていくから、新しい一面にまた惹かれてしまう。

「名前、もう……」

頭を撫でられる。口を離すと、鋼くんはありがとうとでも言うように短くキスをしてくれた。唾液でベトベトになってしまった手をティッシュで拭っている間に、鋼くんが避妊具を付ける。

「久しぶりだから、最初はゆっくりしてほしいかも……」
「わかった」

ベッドに押し倒されて、足を広げられる。鋼くんは自身を私のものに宛てがうと、ゆっくりと腰を入れた。

「あぅ……」

慎重に入ってくる鋼くんのものに、お腹の中が押されてぞわぞわとする。先程の鋼くんの奉仕のお陰で十分過ぎるほど濡れていたそこは、あっという間に鋼くんのものを飲み込んでしまったらしかった。自分でゆっくりしてほしいと言っておいて、慣らすように前後に動かされるのがじれったい。

「鋼くん、もう大丈夫、あっ」
「名前……」
「あっ、鋼くん!」

堰を切ったように、鋼くんは律動を始めた。結合部からぱちゅぱちゅと水音がして羞恥心に溺れそうになる。

「んぅ、んっ、……ぁ……」

我慢するように手を胸の前で握っていると、鋼くんの片手が私の拳を開かせ、組み込むように繋がれた。大きくて温かい手をぎゅうと握り締める。

「こ、くん……すき、すき……あ……」

私の顔の横に肘をついた鋼くんに、耳を舐められながら良いところを擦られて、腰がぶるりと震えた。それを感じ取ったのか、鋼くんは「イっていいぞ」と耳元で囁いて、こつこつとナカを突いた。

「あっ、ダメ、イっちゃ……っ!」

落ちるような感覚と、身体の痙攣で自分が果ててしまったのだと知る。肩で大きく息をすると、鋼くんが薄らと汗を滲ませてにこりと笑った。あ、まただと思った時には遅く、体勢を変えられて、後ろから突かれてしまう。

「んあっ、はっ、ん、あん」
「名前、好きだ……」
「私もっ、すき」

手を突いていられなくなり、ベッドに倒れると、鋼くんが背中から覆いかぶさってきた。背中や肩を舐められて、身体がしなる。

「鋼くん今日、へんっ、あ、だめ!」

それから何度も体勢を変えて、数回の絶頂を迎えた。もう息も絶え絶えで、快楽に耐えるしかない。正常位に戻った私の身体に、鋼くんの汗がぽたりと落ちる。鋼くんはゆるゆると腰を動かしながら「もう出る」と呟いた。頷いて、鋼くんの汗ばんだ身体を抱き締める。鋼くんも私をきつく抱くと、お腹の中で鋼くんのものが脈打った。

「申し訳ない……」

後処理を終えた鋼くんは我に帰ったようで、ベッドの隅で小さくなってしまった。私は身体がガクガクしてしまって動けず、丸まる鋼くんの背中を見つめている。

「鋼くん今日、いつもより……」
「歯止めが効かなかった」
「そうみたいだね……」
「身体痛くないか?」

振り返った鋼くんが、労わるように私の肩を撫でた。

「それは大丈夫だよ」
「ならよかった」

ほっとした様子の鋼くんが、私のこめかみに唇を寄せる。その柔らかさと温かさに笑みが溢れる。あれだけ色々されたのに、痛みが全くないのは鋼くんの学習能力によるものなのだろうか。何から何まで知り尽くされていて恥ずかしい。

「でもちょっと疲れちゃったから、シャワー浴びたら少し休みたいな」
「そうしよう。夕飯は前に言ってた友達の実家の店を予約してる」
「カゲくんだっけ。もしお店にいたら紹介してほしいな」
「もちろん」

鋼くんに友達を紹介してもらえるなんて、こんなに嬉しいことがあるだろうか。ボーダーにはいい仲間がたくさんいるみたいで、本当によかった。

「そうだ、言ってなかったんだけど」
「何だ?」
「実は三門大学の推薦もらえたから、春からこっちに引っ越してきます」
「え!」

ガバッと鋼くんが起き上がって、驚いた顔で私を見た。驚かせたくて黙っていたので、サプライズは成功したみたいだ。

「嬉しい……」
「うん、私も」
「一緒に住もう」
「気が早いよ。私こっちに鋼くんしか知ってる人いないから、お友達たくさん紹介してね」
「ああ」

にこにこした鋼くんの身体全体から嬉しそうなオーラが出ていて、愛おしさを感じた。鋼くんの胸にぺたりとくっ付くと、優しく髪を撫でられる。本当に一緒に暮らすとなったら毎日こんな風に幸せなのだろうか。想像するだけで胸が高鳴って、心が踊ってしまいそうだ。


20210407
椎名様リクエスト作品


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