×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -



わんわんと泣く名前を連れてやって来た真波は、えへへ、と申し訳なさそうに笑っている。

「どういうことだ真波!名前を泣かせるなどこの美形が許さんぞ!」
「おい尽八、真面目にな」
「おにいちゃぁん」

真波と手を繋いでいた名前は、無表情で立ち尽くす福富に向かって両手を伸ばした。しかし福富は自ら赴こうとせず、のろのろと歩く名前をじっと待っている。

「おい福、迎えに行かないか。それでもお兄ちゃんか?」
「あまり甘やかすなと母さんが」
「福富さん、真面目ですね」

泉田が苦笑しているうちにようやく福富の元へとたどり着いた名前は、ワイシャツに顔を埋めてすすり泣いている。

「げ、まぁためんどくさそうなことになってんじゃねぇか!」
「あ、荒北さん」
「それで?一体何があったんだ?」

新開が真波の額を軽く小突くと、真波は「いやぁ」と後頭部をかく。

「授業が終わったんで名前ちゃんと部室行こうってなったんですよ。その途中で名前ちゃんが躓いて転んじゃって」
「言わないでよぉ!」
「だって言わないと俺が怒られちゃう」
「怒られちゃうじゃねぇよ!」

荒北が真波の肩をばしんと叩く。痛いです荒北さんー、と困ったように笑う真波を他所に、東堂は名前の頭を撫でている。

「可哀想にな、痛かったな名前。しかしもう大丈夫だ、俺がいるからな」
「お兄ちゃあん、東堂さんがウザいぃ…」
「ウザくはないぞ!?」

福富からの沈黙の視線に耐えかね、東堂がぱっと手を離す。

「新開、俺ってウザいか…?」
「さぁな」
「名前さん、さあこっちへ来るんだアブ!膝の手当てをしよう」

いつの間にか救急箱を持ってきた泉田は、ベンチに名前を座らせると的確な処置を施していく。

「泉田さん、ありがと…」
「いいんだよ名前さん」
「テメェも転んだくらいで泣いてんじゃねぇよ!ガキかよ!」
「痛かったんだもん!」
「お前ら本っ当似てねぇな!」

手当てが終わった名前は立ち上がると、福富の隣に並んで顔を見合わせる。

「だが荒北、子供の頃はよく似ていると言われたぞ」
「わあ、それちょっと見てみたいですー」
「冷静になれ真波!こいつら二人が似てるところを俺は絶対に見たくないぞ!」

新開はその様子を想像してしまったのか、泉田と一緒に笑いを堪えている。

「お兄ちゃん、そろそろ部活始まる時間」
「そうだな。お前ら、全員部室に入れ」

福富の声で皆が部室へと吸い込まれていく。
なんてことない、いつもの日常だ。

back