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夢みたいな昼下がりを一緒に過ごしている相手がザナークだなんて、少し前の私には想像できなかったことだろう。力任せに暴れまわっていたザナークは、未だにいろんな時代にバイクを走らせては周りに迷惑をかけているみたいだけど、最近はちゃんと現代に戻って来て、旅の話を私に聞かせてくれる。
ザナークはセカンドステージ・チルドレンという特別な力を持った人間だった。セカンドステージ・チルドレンはラグナロク以降、みなワクチンを投与されてその遺伝子の力を押さえている。私はザナークがワクチンを受け入れたのかは知らない。どちらでもいいと思った。自分の好きなように、気ままに生きていくのが私の好きなザナークの生き方だ。

「おい名前、冷めるぞ」

ザナークが頬杖をついて私のことを見ていた。机の上にはコーヒーが入ったカップがある。ザナークはすでに飲み干していて、私が作った焼き菓子を頬張っていた。あまりにも似合わない。ザナークが椅子に座っていることすらおかしくてたまらない。

「何笑ってんだ?俺様に見惚れたか?」
「ふふっ、そういうことにしておいて」
「ふん、お前もなかなか見応えがある奴だ」

あのザナークがこんなにも大人しくなってしまった。正確には私の家に来ている時だけなのだが、なかなかレアな光景だ。是非とも天馬くんやガンマくんに見てほしいくらい。

「……いつまで笑ってやがる」
「うくく、ごめん」

ツボに入ってしまって笑いをこらえきれない。ザナークは眉間にシワを寄せると、私のコーヒーを奪って飲み始めた。

「ちょっと、私の飲まないでよ」
「飲まねぇんだろ」
「飲むよ!おかわりキッチンにあるでしょ」
「淹れ方知らねぇ」

あっという間に空になったカップを乱暴に置いて、椅子にもたれて腕を組んだザナークはドヤ顔でそう言った。確かに、ザナークがキッチンに立つなんて、また私のツボに入ってしまうからやめたほうがいい。

「そういえばザナーク、まだミキシマックスってできるの?」
「あ?」
「ほら、台風とミキシマックスしてたじゃない?」
「それがどうした」
「私ミキシマックスした時のザナーク好きだったから」

するとザナークは唇をへの字に曲げて目を丸くした。何か変なことを言ってしまっただろうか。

「名前」
「なに?」
「俺のことが好きだったのか?」
「え、今さら?」

思い返せばザナークに好きと言った覚えはない。てっきりわかっているものだと思っていた。ザナークは「ほう」と呟いてにやりと笑うと、急に椅子から立ち上がった。つられて上を向けば、片手を机に突いたザナークが私にキスをしてきた。本当に、ザナークは自由だ。

「どうだ」
「なにが」
「決まってるだろ?」
「ああ、はい。よかったです」

ザナークはきっと私に恥ずかしいことを言わせているという自覚はない。そして、この行為がどれだけ私の鼓動を早めているかも絶対にわかっていない。

「そう言うと思ったぜ」

ザナークは得意気に笑った。ザナークのことが好きだ。自分の想像している以上に、好き。これからもずっと、長い間一緒にいたいと、欲が出る。この破天荒な男を引き止める自信なんてないし、いつ死なれるかもわからない。けどここまできたらインタラプトを修正してでも、私の人生に吹き荒れていてくれないと、絶対に許してあげない。
ザナークは私にもう一度キスをすると、「悪くねぇ」と楽しそうに笑った。



ザナークで甘ということで、このような話を書いてみました。
もともとこの「風とコーヒー」というタイトルは私のタイトルストックにあったもので、今回お話を書かせていただくにあたりタイトルから決めようと思いまして。そしてあえてザナークっぽくないものを選びました。ザナークにしては爽やかすぎるタイトルでしたが、楽しかったです。
ザナークが丸くなる日は来るんですかねぇ…。
火月さん、リクエストありがとうございました!




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