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「名前さん!俺とデートしてください!」

仗助くんの自慢の髪が風を切った。この時間一番人が集まる購買の前で私達は偶然会ってしまった。私と仗助くんは付き合っている。だがしばらく会うのを控えようと言っていたのだ。倦怠期というわけではなく、テストが近いからだ。お互いが側にいるととてもじゃないが集中できない。賑わいを見せている購買前は私達を囲うように人だかりが出来ていた。生徒の視線が集まってきて恥ずかしい。一つ年下の仗助くんは同級生に留まらず学校の女の子全体という単位で人気がある男の子だ。ハーフで緑色の瞳をしているし、なによりハンサムだから注目を集める。だから余計に目立ってしまうのだ。頭を下げている仗助くんに慌てて駆け寄る。

「ちょっと仗助くん!頭上げてよ」
「デートしてくれるまで上げません!」
「だからぁ、テスト近いからお互いのために控えようって…。もーどうしよう困ったな」

言葉はこう言っているが実際私の口元はにやけているに違いない。実際億泰くんの可愛らしい目がこれでもかというほど冷えきっている。康一くんは恥ずかしそうに目線を反らしていた。あれが本来私達のあるべき姿だ。でも仗助くんを見るとそんな一般常識が吹き飛んでしまうのだから恋とは不思議なものである。

「俺もう名前さん不足なんスよ!?テスト乗り切れねぇ!」

デートしてくれるまで上げないと言っていた顔を簡単に上げてしまった仗助くんの表情は、なんと表現したらいいのかわからないが必死なことには違いなかった。不覚にも胸キュンしてしまう。仗助くんのこの顔は反則すぎる。レッドカードで即退場だ。

「じゃあ一緒に勉強しよ?学年違うけど一緒にはいれるし。私のうち来る?おうちデート」
「名前さん…!!」

仗助くんの逞しい両手がガッシリと私の手を掴んだ。久しぶりのスキンシップに嬉しくなる。いつのまにか生徒は解散していて、この場に残っているのは私と仗助くん、それから仗助くんを待っている億泰くんと康一くんだけだ。ふと見ると億泰くんが私達を怨んでいるのではないかと思わせるくらいにひどい顔をしていた。そういえば億泰くんは女の子と縁がないことを気にしていると前に仗助くんが言っていた。誤魔化すように笑って仗助くんに手を離すよう催促する。

「ちょっと、仗助くん?ほら、もうご飯食べないと、ね?」

にっこりと笑って握られている手を左右に揺らす。しかし一向に離してくれる気配がない。

「名前さん」
「うん?」
「今の、ムラッときました」
「ええっ!?」

突然の大胆な発言に驚きの声を上げてしまう。仗助くんがきゅっと唇を結んでジリジリと近付いてくるので、それに合わせて後退する。

「なんで逃げるんすかァー?」
「や、あの。ほら、見てるし」

仗助くんはにやけ顔で私を壁に追い詰めた。逃げる場所がなくなってしまい、距離は徐々に縮まっていく。

「仗助くん!ここ学校!公共の場!」
「公共の場でキスしても警察に捕まらねぇーっすよ」

確かにそうだけど、と口に出すことは出来なかった。遠くで億泰くんの「俺のザ・ハンドが空間を削り取る能力と真逆だったらよォー、仗助を名前さんに近付けさせねぇのによー」という私怨が混ざった声が聞こえた。

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