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放課後のチャイムが鳴ってから45分後の図書室は密会の場だ。毎週三日間、私たちは人目に触れないように会っている。
デュエルアカデミアの生徒はあまり図書室を利用しない。頭脳派な生徒も結局は実戦が好きで、図書室で調べものをしている人をほとんど見ないし、純粋に文学を楽しもうとしている人なんて、私は藤原くんくらいしか知らない。藤原くんも、きっと私しか知らないと思う。だから私たちは気が合ったのかもしれない。知り合ってからこういう関係になるまでそう時間はかからなかった。お互いに口に出して言わなかったけど、周りに付き合っていることを知られたくないという思いから、私たちはこうしてこっそり会っている。

「藤原くん」

純文学の棚の側にあるベンチに藤原くんはいつも座っている。何か本を読んでいたみたいで、手には単行本。

「名前」

そう言って片手を上げて笑う藤原くんは誰が見たって格好いい。藤原くんはデュエルが強くて、カイザーと呼ばれている丸藤くんに、女の子から絶大な人気を得ている天上院くん、その二人と藤原くんで三天才なんて呼ばれていたりする。頭も良くて、とても優しい。本当に非の打ち所がない。時々私が藤原くんの彼女でいいのかと考える時があるけど、そのたびに藤原くんは私のことが好きだと言ってくれるのだ。

「名前?どうかしたの?」
「え?」
「笑ってたから」

何かいいことでもあった?と訊く藤原くんの隣に腰かけて、「なんでもないよ」と笑って返す。

「今日も相変わらず人がいないな」
「そうだね。みんなもっと本を読めばいいのに」
「本当にね。ああ、でも……」

藤原くんが眉を下げて残念そうな顔をする。

「そうしたら名前と二人で会えなくなるから、少し嫌だな」
「藤原くん…!」
「あ、赤くなった」
「からかわないでよ」

藤原くんは多分天然なんだと思う。その絶妙な天然加減がいつも私を照れさせる。

「幸せだなぁ」
「もう……だから……」

恥ずかしくて手で顔を覆うと、藤原くんがふふっと笑って私の頭を撫でた。私は口に出して言わないけど、とてつもなく幸せだ。

「やっぱりこうしてひっそり会うのがいいよね」
「うん」
「特別感があるし、それに」

藤原くんが私の手を剥がして、私の顔を覗き込んだ。猫みたいな目が意地悪に細くなる。

「いけないことをしてるみたいだ」

藤原くんと唇が重なる。藤原くんが変なことを言うから、いつもよりドキドキしてしまう。学校でキスをするのはいけないことだろうか。誰かに見られるかもしれないのに、私たちはいつもここでキスをしている。それは恥ずかしい行為なのだろうか。
やがて唇が離れて、藤原くんがにっこりと笑った。唇は離れたけど、繋いだ手はそのままだ。

「ドキドキした?」
「……今日の藤原くん、イジワルだよ」
「そう?」

きょとんとした藤原くんは、「そんなことないけどなぁ」と言いながら私を抱き締めた。華奢だけどしっかり筋肉はついている男の子の身体。

「なんだ、藤原くん」
「なに?」
「藤原くんだってドキドキしてるじゃん」

伝わってきた鼓動は私と同じくらい早くて、やっぱり藤原くんは意地悪なんじゃなくて、ただの天然なのかもしれない。



『秘め事』というタイトルと、私の中の藤原像が相まってプラトニックな感じになりました。藤原の秘め事は、ちょっとした可愛いものというイメージです。藤原確かTFでショコラパンが好きだという噂を聞いたことがあるので、どうしても可愛いイメージが強いです。
もなかさん、素敵なタイトルをありがとうございました!


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