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サカマキ様に言い付けられた仕事はこれまで押し付けられた仕事の中でも一番難解だった。サカマキ様はパーフェクト・カスケイドという歴史上最高峰のアンドロイドを作ったのだが、どうやら今のままでは満足出来ないらしく、彼らの行動を細かく分析し、より人間に近い物を作りたいと言うのだ。その研究係りを任されて一週間ほどパーフェクト・カスケイドの行動をメモしているが、非は一向に見付からない。そもそも、エルドラドでトップの科学者であるサカマキ様が作ったものの非を、下っ端科学者の私が見付けられるはずがないのだ。そのことに早く気付いていただきたい。そうでないと、無能と見なされてエルドラドをクビになるかもしれない。
様々な不安を抱えながらパーフェクト・カスケイド達がいる部屋へ向かう。扉を開けると、中にはパーフェクト・カスケイドのキャプテンであるレイ・ルクしかいなかった。他のアンドロイド達は出払っているようだ。しばらく様子を伺っていると、突然レイ・ルクが私の方を向いた。

「名前」
「えっ」

レイ・ルクが確かに私の名前を呼んだ。これまでレイ・ルク達を観察してきて、向こうからコンタクトを取ってきたことなど一度もない。それが何故か今日は私のことを見て、私の名前を呼んだ。エルドラドに勤めているのだから、レイ・ルクが私のことを知っているのは当たり前かもしれないが、私は驚愕してしまってしばらく声が出せなかったのだが、なんとか絞り出す。

「あ、え、何?」

なんとも情けない声になってしまい、羞恥で頬が熱くなる。

「疑問の意図が不明。追加説明を要請する」
「だ、から…。急に話し掛けてくるなんて思ってなかったから」
「そうか」

レイ・ルクがゆっくりと頷く。どうやら納得してくれたみたいだ。

「マスターに話は聞いている」
「あ、ああ。はい」
「進行状況が芳しくないと判断した」
「……ごめんなさい」
「よって、名前と接触することにより、研究状況の改善を試みる」

アンドロイドに研究の心配をされている私とは一体何なのだろうか。軽くヘコんでいると、レイ・ルクが続ける。

「この数日、私もそちらの行動を分析した」
「ええ!うそ!」
「データを送信する」

心の準備もそこそこに、私の前にデータが展開される。そこには私の行動が細かく記されており、性格診断までされていた。

「軽薄で子供っぽい……」
「違うか?」
「何も言えません」

情けないにもほどがある。優秀な人間が作った優秀なアンドロイドだが、私の立場はどこにいってしまったのだろう。

「だが、根気よく働いている」
「レイ・ルク……」
「サカマキ様は名前をよく評価している。安心しろ」
「は、はい……」

先程から何故か敬語になっているが、私はもうレイ・ルクにタメ口など利けそうにない。私がレイ・ルクを観察していたつもりが、レイ・ルクも私のことを観察していた。そしてサカマキ様はちゃんと私を見ていてくれている。エルドラドに就職して本当によかった。しかし、この仕事だけは無事に報告できそうにない。



『観察日記』ということで、誰が誰を観察するのかいろいろと考えたのですが、結果的に夢主はもちろん、レイ・ルク、サカマキが夢主を観察しているという形になりました。
素敵なタイトルをありがとうございました!

そしてタンタルさん、いつもサイトに遊びに来ていただきありがとうございます!イナクロは終わってしまいましたが、レイ・ルクを始めとするパーカス熱は未だにおさまりません!やっぱりいつ見ても可愛くてしかたないです。
番外編など未だに書きかけで申し訳ありませんが、時々覗きに来てやってくださいませ。


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