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(MV2S番外編)

「名前〜、遊びに来ちゃいました」
「やっほー。ケーキ持ってきたよ!」

笑みを浮かべたベータとオルカが研究室の扉を開ける。彼女達は休憩時間を利用して名前とお茶をしようと目論んでいたのだった。前日に購入した人気のスイーツを持参してきた二人だが、そのにこにこしていた表情は一瞬で固くなる。

「アルファにエイナム!どうして貴方達がいるんですか」
「それは私の台詞だ」

研究室には先客が来ていた。アルファとエイナムはソファに腰を下ろし、自室のように寛いでいる。ベータとオルカは女子三人でまったりしようと考えていたので、計画を崩された二人はふて腐れた。

「ていうか名前は?」
「そういえば姿が見えないけどどこ行っちゃったの?」

研究室をぐるりと見回したが名前の姿がない。アルファとエイナムをじろりと見るが、彼等も知らないようであった。

「レイ・ルクもいない。おそらくマスターの所だろう」
「ふぅん。じゃあアンタ達は勝手に寛いじゃってるわけ?」
「あらやだ図々しい」
「何だと!」
「名前なら許可するはずだ」

研究室が不穏な空気に包まれた時扉が開いた。皆が振り返ればそこには名前、レイ、ガンマが袋を抱えて立っていた。誰もいないと思っていた名前は中にいた四人を見て少し驚く。だがすぐに笑顔に変わった。

「みんな揃ってどうしたの?」
「私とオルカは名前と一緒にお茶をしに来ましたの。アルファとエイナムは何をしに来たのかしら?」
「用件があるわけではない。それよりも何故ガンマがいる」
「スマート、ボクは名前の買い物に付き合っていたんだ」

机上に荷物を置いて中身を取り出す。購入してきたものはマグカップとティーカップが数個。それに平皿が数枚。これまで研究室に訪ねてくる人は殆どおらず、一緒にいるレイは飲食しないのでカップなどは最低限しかなかった。だが友人が増え、このように彼等が遊びに来るようになったので、いつでもお茶が出来るように買い足したのだった。外出届はすんなりと受理され、食器を買うにあたりガンマにおすすめの店を尋ねたところ、案内と荷物持ちを兼ねて同伴した。それが気に入らなかったのか、ベータは頬を膨らませて名前とガンマの間に割って入る。

「今度は私とお出掛けしません?お買い物は女の子同士が一番です」
「ノー。買い物に性別は関係無い」
「本当に喧嘩早いねぇ…。折角遊びに来てくれたんだから仲良くしようよ」

睨み合う二人を見て呆れる。名前はティーカップをキッチンへ運ぶと既にお湯を沸かしているレイに人数分の紅茶を淹れるよう頼んだ。レイは名前が選んだ紅茶の箱の封を切りながら受諾する。

「でも嬉しいなぁ。こんなに人が来てくれるなんて!」
「これまでずっと一人でここに閉じ籠っていたんだろう?」
「レイがいてくれたから一人じゃないけど。閉じ籠ってたっていうか…出る理由がなかったというか」
「それは典型的な引きこもりでは…」

うっかり口を滑らせたエイナムは口元を押さえるが、名前は図星を指されたので何も言い返すことが出来ない。

「しかし、最近は外に出ている」
「そ、そうだよね!すごいアグレッシブに!」
「あんまり必死だとお馬鹿さんに見えますわ」
「ベータってば冷たい」

名前が泣き真似をすればオルカが笑いながら頭を撫でる。ガンマも手を伸ばそうとしたのだが、その手はアルファに叩かれた。

「マザー」
「あ、出来た?運ぶの手伝うよ」
「名前さん、私も手伝います」
「ありがとうエイナム。もしかしてさっきのお詫びかな?」
「う……」
「冗談だって」

にやりと口角を上げてエイナムの肩を軽く叩く。トレーにティーカップを乗せて戻ればふわりと紅茶の香りが広がった。

「言っておきますけどケーキは三つしかありませんから」
「何だって?ボクの分はないのかい?」
「私は必要ない」
「ガンマ甘いもの好きだね」
「そういうわけじゃない」

ガンマは鼻で笑って髪を撫で付けた。その様子を見ながら机上にティーカップを並べる。ソファには全員座れないので簡易椅子を組み立て、名前はいつも座っているキャスター付きの椅子に座った。改めて賑やかになったものだと感じる。こうして友人に囲まれるのは随分と久しい。フェーダにいた頃を懐かしみながら、名前は紅茶の香りを吸い込んだ。


『MV2Sでオメガ達との話』

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