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(MV2S番外編)

何やら集会所が騒がしい。名前は自室から集会所に瞬間移動して来て一番にそう思った。小競り合いをしているのはフェイとメイア、ガロだ。攻撃的なガロだけなら頷けるが、穏健派なフェイとメイアまでが加わっている光景は非常に珍しい。名前は小競り合いを避けるように本棚の方へ向かう。本棚の近くには仲裁に入らず傍観していたギリスが窓際に寄り掛かって三人を見守っていた。

「ギリス、あれどうしたの?喧嘩?」
「君が原因だよ、名前」
「ええ?」

ギリスは呆れたように溜め息を吐く。すると名前という単語に反応した彼等が一斉に振り返り、瞬く間に名前を囲んだ。状況が飲み込めない名前は誰かに助けを求めようとするが、集会所にいる者は皆妙に期待をした視線を向けてくるだけだった。

「な、何かあった?」
「名前、この際はっきりしてほしいの」
「何を」
「チームのことだよ」
「いい加減決めちまえよ」

追い詰められて困惑する。彼等が言い合っていた内容は名前の所属についてだった。結成当初よりも人数が増えてきたフェーダは四つのチームに別れている。サル率いるザ・ラグーンにザン、ギル、ガル。これらのリーダーであるこの三人は未だどこにも所属していない名前を獲得しようとしているのだった。

「そんなこと言われてもねぇ」
「言っておくけどザンは絶対に有り得ないわ。名前をアンタみたいな野蛮な人間のいるチームに入れられない」
「んだと?」
「喧嘩しないー」

ガロとメイアは犬猿の仲だ。些細なことで超能力を使うような喧嘩を始めることも多々ある。それを止めるのはサルか名前くらいだ。他の人間は極力関わらないようにしている。メイアの恋人であるギリスも喧嘩については口を出さないのであった。

「ねぇ名前、これ以上不毛な言い争いもしたくないし決めてほしいんだけど」
「フェイが加わるなんて珍しいよね。普段避けてるのに」
「それは…!ガルの皆が言うから!」
「フェイ!俺達のせいにするなよ」
「そうだぞ」

ヨッカとユウチが端から茶々を入れてくる。その二人を焦ったように睨み付けながらフェイは弁解しようとするが、名前がクスクスと笑っているので押し黙ってしまった。

「とにかく!名前にはぜひともギルに入ってほしいわ」
「でも結局サッカーのチームでしょ?」
「それだけじゃないよ。行動だって別になるかもだし」
「ねぇ、さっきから何してるの」
「サル!」

名前に詰め寄っていた彼等が数歩下がる。サルはにこりとしているが、少し怒っているようでもあった。

「これは、その。ねぇ?」
「メイア、助けを求めてくれるのは嬉しいけど僕は関係ないぞ」
「もう!」

メイアがギリスにくっついてサルの視界から逃れた。ガロとフェイは何も言えなくなって大人しくしている。サルは名前の隣に並ぶと集会所にいる皆に聞こえるような声量で言った。

「名前がどこにも所属しないと言うならそれでいいんだ。無理強いは許さないよ」

柔らかな声だが重圧がある。サルはフェーダの中で名前を自由にさせていた。それを贔屓と捉える者も中にはいる。だが名前のことを毛嫌いしている人間は殆どいない。強大な力を持つ名前はそれをひけらかすこともなく、のらくらな性格も受け入れられていた。

「折角フェーダにいるんだから別れなくてもいいじゃん」
「名前、フェーダは仲良しグループじゃないんだからそうはいかないんだ」
「ややこしいね」

名前が肩を竦める。現在の段階ではフェーダはチームを分けたところだ。これまでは共同生活をし、お互いの境遇を慰めあっていた。だが最近のサルはどこか別の次元を見据えている。チームを作ると提案したのは皇帝であるサルだ。この時サルがセカンドステージ・チルドレンだけの世界を作ろうと目論んでいることを知る者はいない。

「でもまあこれで喧嘩は終わり!よし!今日のご飯は私が作ろうかな」
「それはやめて」
「考え直せ」
「名前、本当にそれは大丈夫だから」
「え?というかやけに協調性あるね君達」
「名前の料理は美味しくないし危ないからねぇ」

サルが笑い声を上げる。以前食事の当番が回ってきた時に名前は妙な包丁の持ち方をして指を切った。他にも火傷をしそうになったりと危なっかしいので味付けの担当になったのだが、何かを間違えたらしくお世辞にも美味いと言えない料理になってしまったのだ。その味を覚えているので彼等は必死になっている。名前は特にへこんだわけでもなく、少し残念そうな表情をした。集会所が知らないうちに和やかな雰囲気になる。サルはやはり名前は特別なのだと再認識した。


『MV2S夢主がフェーダにいた頃のサルやフェイなどのセカチル達の話』

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